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いわゆるオフショア投資セミナーでのよくある話
ロイヤルロンドン(RL360°)やハンサード、インベスターズトラスト、フレンズプロビデントなどの商品をセミナー等を通して契約した方で、ある特定のファンドの直近リターンをだけを見せられて、「オフショア投資はこんなに凄い!」、「海外にはこんなにリターンの出せるファンドがたくさん眠っているんです」と言われてそれを鵜呑みにしてしまう契約者が後を絶ちません。
確かに、香港などで投資をすると、日本では購入できないファンドがたくさんある事に驚かれると思います。平均すると、ひとつの積み立て投資商品だけを契約した場合でも、その中で購入できるファンドはだいたい100種類くらいでしょうか。
しかし、これにはいくつか注意点があります。
特定のファンドの直近の成績だけで積み立て投資の成績が決まるわけではない
このブログでも何度か書いていますが、積み立て投資で重要なのはファンドの分散です。どんなに優秀なアドバイザー、IFAであっても、今後10年、20年ずっとプラスリターンを出し続けるファンドを探しだすことは出来ません。
だからこそ、投資するファンドは分散させるのです。ひとつのファンドだけに投資し続ける事は積み立て投資ではあり得ません。それでは宝くじと同じです。
重要なのは特定のファンドの直近のリターンではなく、あなたのポートフォリオにどんなポリシーでファンドが組み込まれていくかという事です。
例えば、弊社で言うと、以下の様な事です。
【運用方針】
- 株式と債券の2つのアセットクラスをメインにリスクを調整します
- 満期、あるいは積立停止予定の残り年数5年未満、5年以上10年未満、10年以上によってリスク許容度を判断します
- 分散効果を狙い、7つ以上のファンドを同時に保有します
- ファンド保有期間は短期でも最低3ヶ月
- ヘッジファンドの組み入れは極力行いません
- 1ファンドあたり最大組入割合を40%とします
- 株式/債券のリバランスは概ね上下5%のしきい値をトリガーとします
【ファンド選択基準】
- 1つのアセットクラスにつき1つのファンドを割り当てます
- 1つのファンドにつき最大40%のアロケーションを許容します
- 同アセットクラス内に同じようなファンドがあれば、Morning Star Fund Ratingを参考に星の少ないものを選択します。
- バランス・ファンドのような複数のアセットクラスが一つになったファンドは選択しません
- コモディティ(ゴールドなどのメタルや資源)は下落幅の激しいものがあれば選択します。
- ファンド保有期間に制限は設けませんが、Bid/Offerスプレッドや手数料による摩耗を最大限防ぐよう考慮します
アドバイザー、IFAはこのような説明にこそ時間を割くべきなのですが、残念ながらロイヤルロンドン(RL360°)やハンサード、インベスターズトラストなどを紹介しているいわゆる代理店は正規のライセンスを持ったアドバイザーでは無い事がほとんどな為、説明をすることが出来ません。
だから、彼らは特定のファンドの成績だけを紹介するのです。過去数年間に渡って右肩上がりで年平均が10%近いファンドを探すのはモーニングスターなどを見ていけば簡単で、誰でも出来ます。
そのファンドが本当にあなたのポートフォリオに組み込まれていくか確認すべき
基本的な事であるにも関わらず意外と見落としがちな事ですが、セミナーなどで紹介されたファンドが、本当にその積み立て投資商品の中で購入できる商品なのかどうかは確認するべきです。
百歩譲って将来有望であることが確定的なファンドがあったとしても、それを購入できなければ意味がありません。先述しましたが、通常、ひとつの積み立て投資商品の中で購入できるファンドはだいたい100種類くらいです。
契約する時は数年後に資産が何倍にもなっている姿を想像して夢見がちになってしまい、契約後のポートフォリオを確認しない人がほとんどですが、怪しいなと思ったら運用レポートを取り寄せてチェックする事をお勧めします。
しかし、これまた残念なことに、契約して何年か後に運用状況を確認しようとしても、その商品を紹介してくれた紹介者は既に連絡が取れないという事が多いので確認しようがなくなっているパターンも散見されます。
運用シミュレーションにはほとんど意味が無いと心得る
オフショア投資セミナーなどでよく紹介される運用シミュレーション、いわゆる複利の効果を謳うものですが、あれには意味が無いとお考えください。
↓典型的なグラフはこういうものです。
繰り返しになりますが、ずっと上がり続ける事が確定的なファンドは探し出しませんし、ファンドを分散させる事でリスクは平準化出来ますが、それでも20年、30年と経過すれば年によってはマイナスリターンになることは必ずあります。
大抵の運用シミュレーションは、毎年必ず5%、10%のリターンが出続ける事を想定していますが、それは複利の効果を実感するためのものであって、現実的にそうなることはあり得ません。
代理店のシミュレーションとプロバイダーのシミュレーションの違い
日本でセミナーを受講して見せられるシミュレーションは、ほとんどの場合、そのセミナー主催者たる代理店が独自に算出したものだと思います。
それには、運用中にかかる各種手数料がほとんど考慮されていません。
最低限の説明として、セミナーの最後の方に、初期口座期間中(最初の2年間)は6%の手数料がかかります、などとサラッと解説している場合もありますが、6%手数料が取られるという事は、最初の2年間は10%のリターンが出たとしても4%に減るという事です。
更に、IFAはアドバイザリーフィー1%の手数料を取りますし、その他の細かい手数料を考慮すると初期口座期間中に取られる手数料は8%弱くらいにはなるでしょう。
そして、実際に10%の運用リターンを出すことはかなり難しいので、ほとんどの人の初期口座期間の運用はマイナスになるはずですが、そこにボーナスという仕組みがあるので、なんとかプラスを保てるという状況です。
※ボーナスについては別途解説しますが、初期口座期間中のみに積み立て金額や契約年数に応じて付与されるお小遣いのようなものです。
一方で、プロバイダーの出すシミュレーションは、各種手数料が考慮された上でのシミュレーションなので、契約後、少なくとも数年間はボーナスを考慮しなければ元本割れしています。※通常アドバイザリーフィーはシミュレーションに入らないので、実際は更に低くなります。
10年以上持った上で初めて利益が出るように設計されているのがこういった積み立て投資商品です。
日本の代理店や紹介者はそれを知られると都合が悪いので、もしくは本当に何も知らない為に、プロバイダーの出したシミュレーションを見込み顧客に見せることはありません。
契約する前には、必ずプロバイダーの運用シミュレーションを確認するようにしましょう。
「このファンドは去年20%の利益が出ましたよ!」には意味がありませんね
ここまでお読みいただいた方であれば、上記の言葉に意味が無い事はお分かり頂けたかと思います。
代理店や紹介者の言葉を鵜呑みにする事無く、うまい話には必ず裏があるという姿勢で積み立て投資は検討するべきです。
運用方針がしっかりしていて、リターン、リスクに関する説明をごまかさずしっかりやっているIFAやサポート会社がバックにしっかりついていれば、積み立て投資は必ず将来の資産形成に有効なものとなります。プロバイダーや商品ごとにもちろん優劣はありますが、ロイヤルロンドン(RL360°)やハンサード、インベスターズトラスト、フレンズプロビデントなどの運用がマイナスになっているからといって過度に悲観すること無く、その投資を活かす事を考えましょう。