先週木曜日、7%近く下落したダウ平均。急激な株高からの久しぶりの下落だった。これは3月の急落の再来かと思われた方も多いかもしれない。ニュースのヘッドラインを確認すると、以下のようなことが見出しとなっていた。 |
・FRB、2022年まではゼロ金利継続の見通し ・アメリカで新型コロナウイルス、第二波の予兆 ・数百万人が今後ずっと失業状態となるおそれ |
「だから、株価が7%近くも落ちた」と言うのは簡単だ。しかしFRBがゼロ金利を最低でも1年継続することはある程度予想ができたことだし、第二波についてもそんな新しいニュースではない。また今回のコロナで大きく「仕事」が失われて、それがすぐに戻りそうにないということは嫌というほどニュースで繰り返し報道されている。 ということは、これらの報道に何ら新しい要素はなくニュース自体のインパクトではない別の要因が働いていると見るべきだ。そういったマーケットの機微をとらえていくということが私たちの最大の仕事でもある。 私どもが推察するにその別の要素とは、個人投資家の動きだ。これだけ急激な上昇の裏で、投資銀行や大手ヘッジファンドなんかはこぞって「株式は割高だ、手許現金を確保しておく」というレポートが至るところで見られた。いわゆる主流派の金融プロたちの言うことを尻目に、株価はどんどんとつり上がっていった。 何かヘンだと思っていたら、Twitterでこういうのが流れてきた。 |
I should be up a billion dollars with how right I was about cruises and airlines. #ddtg pic.twitter.com/FIWAzjKTdW— Dave Portnoy (@stoolpresidente) June 8, 2020 |
「俺はバフェットより投資がうまい、彼が売却した資産はみんな上昇してる。こんな簡単な投資ができないバフェットなんて投資の神様といえるのか?」 口の悪い個人投資家だが、これが60万回も再生されて投資クラスタの間でまぁまぁ話題になっている。個人投資家は彼の言葉にわりと賛同しているようだ。個人投資家が「買い時を逃すまい」とロクな分析もせず買い漁っている情景がなんとなく浮かんできたのだ。 また、弊社のクライアントでも上昇を続ける株価にそわそわしている方が何人もいらっしゃる。個人投資家は資金を失う恐怖のコントロールができてない上に、今回のような「チャンスに乗っかれない恐怖」のコントロールもできないのが普通だ(だから私たちのような人間がいる)。 これまでの数週間の株高の原因は、こういった個人投資家が我れ先にと市場に群がっているからだと推測する。事実、Menlo Parkというネット系証券会社は第一四半期だけで3百万人の新規口座開設があった。日本国内最大の証券会社である野村證券の全講座数が5.3百万口座、ネット系証券最大のSBI証券が5百万口座だから、人口比で考えても3ヶ月でどれくらい多くの人が証券口座を開いているか… その個人投資家がさすがに急激な上昇にビビって買いどきを探っていたらたまたま他の個人投資家も同じことを考えていた… というのが今回の構図だろう。 今回の主張は、「同じような投資家になってはならない」ということだ。欲望と恐怖が交錯する金融市場ではこういった個人投資家が先にマーケットから退出する。それは欲望と恐怖が増幅されているからだ。そして欲望と恐怖を増幅する装置はニュースでありネットだ。個人投資家がいくら素早く情報を掴んだとしても、ミリ秒単位で戦っているアルゴリズムに勝てっこない。 ではどうするか? ニュースやネットから距離を置くことだ。もっというと、最新の機器で情報を集めるのではなく、できるだけローテクに徹して情報を意図的に遠ざけることだ。売買のシグナルをキャッチせず、淡々と長期分散投資を継続することこそ、すなわちローテク投資家になることが一番の勝ちパターンになるだろう。 |
ポートフォリオ |
今回の下落を売りシグナルとしては見ていない。どちらにしろ株高は一過性のもので、下落相場の入り口でしかない。 ※ ポートフォリオ変更の内容、変更の有無については、次回のサービス内容改定時からはご契約中のお客様のみにお知らせいたします。 |