ついに始まるQ”T”
リーマン・ショック後、世界の資産を高騰させた原因の一つがQE(Quantitative Easing、量的緩和)にあったことは疑いない。中央銀行が不良資産を買い取り、市中にマネーをじゃぶじゃぶつぎ込むことで銀行にはカネを貸しやすくし、余剰のカネを資産に向けさせて景気回復を図ろうという計画だった。一部ではそれはうまくいった。株式のボラティリティは2007年中頃の低水準となりリーマン・ショックがあったことすら忘却の彼方にあるようだし、失業何時は4.3%と16年で最低の水準である。
最新の連銀議長のイエレンの発言によると、次の利上げは12月、その前の9月に量的緩和を逆流させるQuantitative Tightning、量的縮小を始めるという。金利を引き上げると同時に今まで中央銀行が購入してきた米国債などをマーケットに次々に放出していくことになる。株式市場は今まで自社株買い・配当支払いのためにカネを借りていた企業が自社株買いを控えるだろうから、株式市場にそれを打ち消すような明るい材料がないと今の水準以上には少々は期待できないだろう。
また債券市場は需給関係が崩れるだろうから、利回りは低下する傾向となるだろう。すなわち、株式・債券ともにリーマン・ショック後のもっとも美味しいタイミングは終わりつつあることになる。リスクに対するリターンが得られないとなると、弊社のポートフォリオも徐々に債券にシフトしていくべきだろう。
クライシスは近いのか
この数ヶ月、1年の間でリーマン・ショック級の危機が起こるとは思えない。銀行の体力はバーゼル3によって強化されたし、証券会社もデリバティブやレバレッジのある金融商品の取り扱いに慎重になっている。なので次なる金融ショックは起こりそうにない。しかしミニ・クライシスはいつでも準備をしておかねばならない。ECBの金利引き上げ、中国の不動産バブル破裂、アメリカのカードローンなど次なる信用危機の引き金になりそうな事象はそこかしこにある。
積立投資を行っている人は、すでに積みたった部分についてはリスクを少なめにすることをおすすめしたい。一括投資の人は、しばらくつまらない展開が続くであろうが投資家は逃げ足が早い。逃げたところで拾っていくのが個人投資家の強みなので、短期的なアップダウンに一喜一憂せず腰を据えて資産運用に取り組んでいただきたい。
※本記事は、毎月発行の弊社メルマガに掲載しているものです。ご登録頂くと最新のマーケット情報を毎月お届けします。ご登録はこちらから。登録特典としてeBook「”海外投資における5つの誤解と真相、その対策”」をプレゼント。