最高の四半期
北朝鮮の長距離ミサイル問題など、局地的に地政学的リスクは発生しているもののグローバルでは経済指標は安定して推移しており、2006年時のような行き過ぎた景気過熱も見られない。インフレは低水準、株式債券ともにボラティリティが低く、このような安定した投資環境は過去に存在したのか思い出せないくらいだ。これは投資を始めるのに絶好の機会である… ということでは全くない。投資を”すでに”行っている方には良い環境だというだけであって、投資を”これから”始める方にとって同じく良い環境になるとは限らない。私どもにとって投資を始める絶好の機会は世の中が混乱の極にあり誰もが悲観的なムードに包まれているときである。
弊社のポートフォリも金融市場の好調と歩調を合わせるように伸びている。ただ株式も債券も弊社の見立ては”高い”と感じており、いずれやってくるであろう調整局面のためにややディフェンシブにはしている。全力でギアをあげていく段階ではないが、必要なリスクテイクは今後も積極的に行っていくことになる。次のポートフォリオの見直し時期が迫っているが、微調整となるだけで大きな変更はないだろう。
今後の見通し
短期的には、たとえば6-12ヶ月後に金融危機が起こるとは考えられない。金融市場におけるお気楽ムードはしばらく続くだろう。が、このメールマガジンでも時折指摘しているとおり今まで人類が経験したことのないことがこれから発生していく。それがどう金融市場ひいては経済に波及していくかは全く未知数である。
Pimcoのマーケットレポートが、短期的にではなく長期的に注意しておくべき問題をABCとして3つあげていた。高齢化(Aging)、中央銀行のバランスシート縮小(Balance Sheet)、中国の債務レベル(China)の3つである。注意、といっても漠然としているが、AをベースにBかCが次の金融危機の引き金となるだろう。またこのABCは人類が全く経験のしたことのない事である。
まず高齢化。日本だけでなく中国もヨーロッパもアメリカも高齢化の問題を抱えている。すなわち世界が高齢化しているということだ。医療費がかさみ、国庫を圧迫し、行政サービスは落ち、税金はあがり、可処分所得は落ち、結果として経済がシュリンクしていくという経験を人類はいまだかつて経験したことがない。
また中央銀行のバランスシート縮小もそうだ。金利の上げ下げだけが中央銀行の仕事だったのが、金利をゼロにしても景気が悪かったため資産を購入をしたのが先の金融危機で起こったことだ。資産の購入は”非伝統的金融政策”と言われた。であればそれに続く資産の売却も非伝統的金融政策である。そもそも日銀がデフレ脱却のために2000年に行ったのが最初のQEだったが、その後日銀は縮小は行っていない。縮小を行うのはこれが最初だ。
そして中国。計画経済は尋常でない速度での経済成長をもたらした。尋常でない量の債務を生みながら。債務の膨張レベルは成長スピードをはるかに凌駕している。”計画経済だから日本のバブル崩壊のようにはならず、債務も計画的に整理されていくのだろう”となんとなく思いがちだが、一つの方向を向くと一斉に同じ方向を向く国民性もありどうなるかは分からない。
弊社としては、まずはBCのリスクについて注意深くウォッチしていく所存である。
※本記事は、毎月発行の弊社メルマガに掲載しているものです。ご登録頂くと最新のマーケット情報を毎月お届けします。ご登録はこちらから。登録特典としてeBook「”海外投資における5つの誤解と真相、その対策”」をプレゼント。