米 vs 北朝鮮への見方
北朝鮮に長距離弾道ミサイルの実装がなされ、脅威の度合いがかつてないレベルにまで上昇している。中東のように、北朝鮮にはアメリカの経済成長の鍵を握るような資源がないためアメリカが積極的に攻撃する政治的意味合いはないが、米国民はすでに北朝鮮の脅威をISISと同程度と見ており(参考リンク1)、トランプ政権は中国に北朝鮮事情を丸投げできる状況ではなくなってきた。北朝鮮情勢をうけて韓国だけでなく、世界の株式市場も2-3%下落しており避難先としてのゴールドが買われている。北朝鮮がアメリカに対して挑発を続ける限り、投資家心理はネガティブなままだろう。北朝鮮は長距離弾道ミサイル以外にアメリカに対して有効な火力をもたないが、何らかのきっかけで偶発的に戦争が始まってしまったら(第一次世界大戦のサラエボ事件ように)、株式市場はここからさらに10-15%下落することも考えられる。
ただし、米同時多発テロ事件いわゆる911のときもそうだったが、戦争など地政学的リスクが株式市場に与える影響は考えるほど大きくない。911でマーケットが沈んだと考えているとすれば、それはドットコムバブルの崩壊を忘れている。善悪でいうと、戦争であれ何であれ人を殺し傷つけるという行為は人類の英知に反するものだ。金融事象としての地政学的リスクは直接的にはレバレッジを含まない。国が戦争をするとき国債を発行するかもしれないという意味ではレバレッジを含むがアメリカが国庫を空にしてまで北朝鮮を叩く理由はないし、戦力に圧倒的な差がある現状ではアメリカが本気になれば2-3週間で平壌は制圧できるだろう。市場に最も大きなインパクトを与えるのはいつも企業や家計のレバレッジ、すなわち借金である。レバレッジは地味だ。紙面でも戦争ほど派手に取り上げられないし、仮に取り上げられたとしても読者の注意は惹かない。ちなみにアメリカの家計、会社でいうとすでに2008年レベルを超えている(参考リンク2、3)。
政治情勢は投資家心理に影響を与える。不安があればポジションを手仕舞いたいたくなるのはもっともだ。しかし、こういった投資家心理に煽られて買ったり売ったりしてはいけない。車の運転でいうと、無理をして車線変更をしようとして事故を起こすようなものである。得られるリターン(目的地に少しだけ早く到着する)は少ないのに、被るダメージは大きい。
参考リンク1
https://www.statista.com/chart/10664/just-how-scared-are-americans-of-north-korea/
参考リンク2
https://www.cnbc.com/2017/05/17/household-debt-levels-higher-than-2008-debt-levels.html
参考リンク3
https://www.cnbc.com/2017/04/11/corporate-debt-is-at-new-highs-and-these-companies-owe-the-most.html
IFAスイッチの運用方針に変化なし
変わらずやや保守的な運用とし次のターニングポイントを待ちます。債券比率を増やしていき、可能性として大きく需給関係が崩れたアセットクラスに投資ができればと考えています(とはいえなかなかチャンスは巡ってきません)。今後、少なくとも数ヶ月にわたってこのような投資スタンスでいきます。
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