As good as it gets
ゴールドマン・サックスの2017年最後のレポートのタイトルが「これ以上のぞむべくもないくらい最高(As good as it gets)であった。他の投資銀行の2017年を振り返るレポートもほとんど内容が同じで、レポートによって各トピックへのウェイトの軽重はあれども要点は以下の3つに集約される。
・アメリカ株は日欧株に比べて割高、しかし経済のピークアウトは当分先
・昨年連銀が始めた利上げとQE縮小のトレンドは今年も変わらない
・ボラティリティがとにかく低いから、この状態が普通だと思わないほうがいい
まず1つ目、アメリカ株が割高だという点について。一つの尺度で株式の割高・割安という判断をするのではないことを断りつつ、PER(株価収益率)という指標で判断するとアメリカ株が過去平均16倍であったのに対し現在は22倍を超える水準である。ざっくり言うと、市場は今後22年間分の収益を先取りしていることとなる。
ただし、目下アメリカ経済は絶好調だ。PERでいうと収益が伸びればその分株価がさらに伸びる余地がある。なので今割高だからといってアメリカ株を全部売却してしまうことはオススメしない。アメリカ経済が世界経済を豊かにするという構図は2018年度中も変わらないだろう。
2つ目、利上げとQE縮小について。利上げは2018年度中3回行われ、今年度末には2%-2.25%程度に落ち着くだろうと見られている。利上げをすることは、「非伝統的金融政策」と言われたゼロ金利・量的緩和から脱出することだから大いに歓迎するべきだ。利上げが株式市場にとってマイナス影響をもたらすという見方もあるが、過去の利上げ局面では景気後退入りした回数より景気が拡大した回数のほうが大きい。しかも市場はリーマン・ショック以降完全に連銀に投資判断を委ねていることもあり「連銀が利上げが可能になるくらいマーケットの調子はいい」と市場が判断し利上げによってさらなる買いを呼び込む可能性もある。
3つ目。株式の騰落の度合いをあらわすVIX(ボラティリティ指数)がかつてないほど低くなっている。ボラティリティが低い原因は様々あるが、市場は低ボラティリティに安心しきっている状況であり北朝鮮情勢や中東情勢で地政学的リスクへも市場は敏感になるころだろう。騰落がやや出てきたところで、今までの平穏が異常なだけである。
これら3つの事象が市場に与える影響について。株式市場については、アメリカ企業の決算に応じてまだまだアメリカ株が上昇する余地はあるが、日欧株式市場と比較してその余地はより少ないといえるだろう。中国経済は予想よりも上向いており、中央政府の経済政策がうまくいっていることを伺わせる。米中経済が好調である限り、今年度も株式市場においてはネガティブサプライズは少ないと考えられる。
債券市場についてだが、利上げ&QE縮小は債券価格にネガティブな影響を与え始めている。ただし、そのネガティブな影響は米国債など高格付けのものだけに限られており、私たちが投資対象とする比較的格付けの低いファンドにまでは及んでいない。債券市場は株式市場から流出する資金のバッファとなっていることもあり、債券市場も昨今のカネ余り状況下では債券市場から撤退するのは得策ではない。
商品市場について。ゴールドは利上げ局面ではますます脆弱なものになるだろう。もともとゴールドには「貴重だ」というだけで企業や不動産のような利益を生み出す内在的価値がないので投機には向いていても資産運用は不向きである。オイルや天然ガスについては減産効果もあって価格をキープできており、2016年のような低価格にはならないだろう。
2018年の投資戦略
この好景気がいつまで続くか。それは分からないが、不景気⇔好景気と繰り返すサイクルは資本主義にビルトインされているというのが私たちの考え方だ。永久に続く景気も不況もない。この好景気が永久に続くとは思わないが、次の景気後退までには当分時間があるだろう。具体的には今後1年は景気後退(2四半期連続でGDPが減少すること)はないと考えている。
したがって、今年の弊社のポートフォリオは昨年とほとんどそのままで、微調整にとどまるだろう。弊社のクライアントのほとんどは、昨年弊社のポートフォリオに従って大きく値上がりしたことと思う。増えていく数字を見るのは楽しいが、今までそのポートフォリオに大いに貢献したアメリカ株式を徐々に手放していくのはいい気持ちではないが、ここは冷徹にポートフォリオをリバランスして頂きたい。
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