先週、アメリカ・ハイテク株が急落したのをきっかけに米株が総崩れとなり、翌日それにつられるように株式市場が数%の下落をみせた。特に中国市場は、もともと米国大手ネット会社に対するハッキング疑惑で特に地合いが悪かったこともあってさらに落ち込んだ。終わらない米中貿易戦争に連銀の金融引き締め、トランプが実施した減税の効果が薄れてきていることもあって「そんな長期間上向きな相場は続かない」と投資家が疑心暗鬼になっているところへの今回の衝撃である。
米株式市場が3%以上下落したのは今年に入って3回目。これは2011年以来のことだ。すなわち7年間投資家はこの騰落を経験せずにいたことになる。
株式市場は参加するすべての人の総意からできているため、今回の下落の原因をなにか一つに絞ることはできない。が、様々なマーケットレポートに接していると「リーマンショックから節目の10年、何かが起きる」という漠然とした不安感が基調として存在し、それに様々な指標がくっついて下落、AIなどの機械売りがそれを加速させたというのがもっともらしい説明となるかもしれない。
こういったヒステリー的な市場騰落についてはあまり深入りして議論しても仕方のないところであり、仮にわかった気になったとしても得られるものは少ない。「金融市場とはそういう性質のものだ」と受け止めるほかない。
米10年国債の利回り上昇が意味するもの
私たちがより注視しているのは、構造的な問題である。米ドル建て資産が多くを占めるこの世界で、米10年国債の利回りほど大事なものはない。米ドルを借りる人は多かれ少なかれこの米国債のイールドが参考となる。この米10年国債のイールドが3%を超えて安定しだした。すなわち事業であれなんであれ、米ドルを借りようとすれば毎年3%の金利を支払わねばならないこととなる。
米経済が好調だから、アメリカ企業がすこしくらい高い金利で米ドルを借りたって別にどってことないじゃないか、と思われるかもしれない。米国内に限っては確かにそのとおりだ。しかし米ドル建てで借金をしているのは米国内企業だけでない。米国外の多国籍企業や通貨の弱い新興国が米ドル建てで借金をしている。
低金利時代にはわずかの金利で借りることができたものが、利回りの上昇にともない調達コストが高くなる。これは企業であれば設備投資意欲を失い、新しい雇用が生まれにくくなるだろうし新興国であれば当該国の通貨がますます減価し国内でインフレを招き国民の生活を圧迫するおそれがある。
そしてこの米国債のイールド上昇はかつてはピカピカに見えた新興国への投資への意欲をくじかせるものになる可能性が大いにある。
ポートフォリオ
株価収益率でいうと米国だけは異様に高い水準、新興国はおしなべて過去平均に近づきつつある。ポートフォリオを変更するとすれば、こういった下落傾向のある資産を買い増す方向になるだろう。