先月の金融市場は揺れに揺れた。2015年末に最初の利上げがあって以来、好調な米経済に支えられて市場は低いボラティリティを謳歌していたものの、突如として大きな波に飲み込まれてしまったかたちだ。NASDAQは過去7年で最大の下落を記録し、香港ハンセン指数にいたっては37ぶりの下げ幅だった。
サッサと手打ちをするだろうと見込まれていた、米中貿易戦争がますます混沌としてきたのにくわえ、サウジの記者殺し、原油価格の突然の下落、中国の中央銀行による異例なほどアグレッシブな姿勢の緩和などが続き、売り込まれた。 もちろん、基底にあるのは米連銀の利上げである。
ただ、いきなり地獄の釜の蓋が開いたと理解するのは早計だ。10-20%の下落は1年に1-2度はあり、投資家はこれを「マーケットのげっぷ」と呼んだりする。なぜ「げっぷ」というかというと、株式市場が吸い込んだ空気(=実態のない利益)を吐き出すことと比較されてのことだ。リーマン・ショック時は貸しはがし・貸し渋りなどのレバレッジの逆流(デ・レバレッジ)を伴う株価下落だったのだが、今回はレバレッジの逆流が伴うものではない。
それに米経済は引き続きトランプ減税と公共事業で好調である。失業率は過去最低に達し、ようやくインフレの兆しも見えてきた。レバレッジの逆流が起こらない限り、リーマン・ショック時のような雪崩のような株価下落は起こりにくいと考えている。
いずれ信用収縮を伴う景気後退は起こるだろうが、それまでにはもう少々時間があるというのが弊社の見立てだ。
連銀は投資家のためにあるのではない
米連銀が利上げ基調にあることから、「株価が一定程度下落したら連銀は利上げをストップするはずだ」という見方をする方がいる。そう錯覚するのも仕方がない。連銀はゼロ金利で足りずに大規模な資産買い入れプログラムを実施しアメリカ中の不良債権を買った。信用状況は大きく改善し資産価格は上昇し投資家の損失は回復した。
この一連の流れをみると「連銀が自分たち投資家を助けてくれた。そんな連銀が自分たちを犠牲にしてまで利上げを継続し続けるわけがない」と考えるのは自然な流れだ。またトランプ大統領も「利上げを望まない」と発言していることから、何かしら政治的な意図が利上げ上昇にストップをかけるかもしれないと期待してしまうのは仕方ない。
しかしこういった見立ては間違っている。連銀は自律した機関で、行政府とは独立した判断をする。そして目標は「物価と雇用の安定」だ。逆に物価と雇用が安定しさえすれば、他はどうなっても構わないのだ。金融市場が大混乱すれば、実体経済にも問題は波及する。連銀の仕事はそこからであり、金融市場の安定は連銀の目標ではない。
結果、連銀が利下げによりバブルを作り出し利上げによりそのバブルを崩壊させたとしても連銀の責任ではない。
ポートフォリオ
新興国の下落の度合いが速いので、先進国によりがちな今のポートフォリオを微調整していきたい。