この数日「米国債3年と5年のイールドが逆転した」というニュースで資産運用業界はもちきりである。簡単に説明すると、アメリカの国債の満期3年のものと5年のものと比較すると、長期の5年のほうが通常は利回り(=イールド)は高いはずだが5年よりも3年のほうが高くなってしまった、という現象だ。
これはすなわち、将来の見通しやすい3年のほうを投資家は悲観的に考えてより将来の見通しにくい5年のほうを悲観的には考えていないことを意味する。
米国債では様々な満期のものが取引されているが、たとえば10年国債と2年国債のイールドが逆転すると(すなわち10年国債の利回りが2年国債の利回りより高くなると)、不景気が訪れるといわれる。過去3回の景気後退の2-4四半期前には10-2年のイールド逆転が見られた。
直近の経済は好調であること間違いない。しかし2007年の暮れも同じような状況だった。経済は絶好調で連日株式投資はバブル気味の様相を呈していた。それがいくつかのサブプライムローンの破綻をきっかけに大きな債務巻き戻しのうねりとなってリーマンショックにつながる。
当時ももちろん5-3年のイールドは逆転していたし、より極端な10-2年のイールドも逆転していた。ちなみに現在10-2年のイールド差は0.16%でほぼ肉薄し、いつ5-3年のように逆転してもおかしくないといえよう。
「人類は不景気を経験するたびにかしこくなっているはずだから、もう次は不景気は来ないかもしれない」と言う方がいる。そんな時代になれば素晴らしいことだが、人間はかしこくない。過去の過ちから学ばず、いとも簡単に忘れてしまう。経済でいうと、かつて借金で家を失ったのにもかかわらず支払限度額いっぱいまでクレジットカードを使ってやりくりが破綻する人たちがどれほど多いことか。
不景気はやってくる。「もし」ではなく「いつ」と問うべきだ。かつてのイールド逆転のタイミングから不景気は6-18ヶ月以内に起こっている。ビジネスマンなら新規の出店などを控え手元現金を分厚く、金融資産は手仕舞えるものがあれば徐々に手仕舞っておくとよいだろう。
ポートフォリオ
ボラティリティや相関係数などのデータを取りつつ、組み直している。この1-2年やや保守的だったものを積極的にリスクを取りにいくスタイルに変更するつもりだ。相場格言「人の行く裏に道あり 花の山」すなわち利益を取りたければ人と逆のことをしなければならない。世の中が悲観的になればなるほど、私たちは果敢にリスクを取る必要がある。