政治に翻弄された1ヶ月
政治ニュースが金融市場に与える影響は、短期では軽微である。不謹慎だと言われるかもしれないが、2001年の9/11事件のショックは人々の心には多大な影響を与え、それがいまだ潰えることのない状況でありながら、金融市場的にはそのショックは数ヶ月で回復した。しかし長期的にみると「文明の衝突」を引き起こし、国家を疲弊させ金融市場に影響を与えることもままある。政治ニュースは特にその表面上のインパクトと実際の金融市場に与えるインパクトを考える必要がある。
先月からホワイトハウスでは貿易関税のことが取り上げられ世界を震撼させた。モノやサービス、それに付随するカネを自由に行き来させるというグローバリゼーションは万物の自然な流れではなく、一人の男が思いつきで決めるという事実が白日の下にさらされたからだ。関税障壁で雇用が生まれるところもあるが、相手国に対抗されてしまえば雇用を失う。現在大局的にみてユーロ、東南アジア、日本を含む環太平洋と3つの経済圏に収斂しつつあり、そこからさらにアメリカは東南アジアを飲み込んで経済覇権圏を目指していくはずだったのに、一歩後退である。
そして日本では蕎麦のような呼び方となっているモリカケ問題。特にモリのほうだが海外ではほとんど報じられていない。行政文書を改ざんすることは、もちろんNGなのだろうが今安定的な安倍政権を打倒してまで、政治的混乱とそれにまつわる行政コストを負担してまで正さなければいけない問題だとも思えない。中国では習近平が人気撤廃をし、トランプはこの秋の中間選挙でロシア疑惑で弾劾されてしまうかもしれない。そういった中で脊髄反射的に、鬼の首を取ったかのように反応するのはいかがなものか。私どもは「美しい日本」といったような何かをごまかすような気持ち悪い標語をかかげる安倍首相の感性はいかがなものかと思うが、彼の政治・外交手腕は高く評価するべきだと思っているし、行政文書の改ざん – しかもそれがロシア疑惑のような世界最強国の大統領選をめぐるものではなくちょっと天然な首相夫人のご機嫌をとるために土地を安くで譲ったというセコい話 – 程度で大騒ぎするほどのことでもないと考える。
さて弊社のポートフォリオであるが、従前どおり様々な経済指標を読み解きながら決定している。私たちが気にしている問題は、残念ながらほとんどのニュースで取り上げられない。1つは株価が高値圏にとどまっていること、もう1つはイールドカーブがフラット化しているということだ。株式が高値圏にあることは本メルマガでも繰り返しお伝えしているところだ。平たくいうと、企業が儲ける力に対して株価が過大に評価されているということになる。
そしてイールドカーブがフラット化しているということは投資家は今後の投資利回りに期待をしていないということになる。私どものスタンスと全く反対のことを書いているブルームバーグの記事があるが、ご興味があれば読んで頂きたい。過去の例をみと資産価格が過大でイールドカーブがフラット化してくると、リセッション(景気後退)が起こりうる状況だ。
ポートフォリオは?
弊社のポートフォリオは常にトップダウンとなっている。すなわち経済指標がもつ意味を考え、それをポートフォリオに反映させる。私どもの考えだと、グローバル経済は景気拡大の最終局面にあると考えている。全世界で債務レベルが膨張しているので、どこかで必ず揺り戻しが来て資産価格を押し下げることになる。それがいつ来るかは分からないが、それにどう対処するかについては弊社は自信がある。恐怖におののく投資家を置き去りにすることはないので、安心してついてきて頂きたい。
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