好調な経済
米中貿易戦争の引き金がひかれるかもしれないということでこの1ヶ月株式市場は軟調だったものの、失業率はさらに低下し物価も上昇、企業の高収益報告もそこかしこで聞こえており経済全般はアメリカに限らず大変に好調だ。好調なのにもかかわらずアメリカは減税と財政支出で更に景気浮揚を狙っている。トランプ政権の中間選挙対策だ。弊社としては、感覚的にはこのように好調な景気が続くのはあと1-2年とみており、「減税」や「財政支出」などいわゆる景気後退時の政策ツールを今の時点で使ってしまうのはあまりにも悪手なのではないかと考える。
もし景気浮揚が思うようにいかなければ、政府も連銀も次に打つ手が限られることになる。連銀の利下げは前回の景気後退期で5%以上利下げした。今現在、1.5%-1.75%なのでこの範囲でしか利下げできない。また長期債券を買いまくる量的緩和政策がどれほど効果があったのかの検証もしないままに、次の量的緩和政策がどれだけ国民の理解を得られるかは微妙だ。
とはいえ日米欧と失業率はかなり下落し、労働市場が逼迫してきているため給料が上昇してインフレが起こるという好ましい循環にいることは間違いない。これから上場企業は好決算を連発し、明るいニュースが飛び交うだろう。高値圏で投資家は神経質になってきているので上値は重いものの、年初に申し上げたとおりポートフォリオに大きな変更が必要な段階ではまだない。
米中貿易戦争のゆくえ
米中のチキンレースについて思うこと。あえてチキンレースと言わねばならないのは、貿易戦争はどちらにもメリットがなくリスクしかない競争だからだ。
各国のつながりが強まり、自然と国境が薄くなっていき、ヒト・モノ・カネが自由に行き来するようになる、というグローバリズムという考え方は最初はアメリカの巨大資本が宣伝していた。グローバルに事業を展開できるようになれば、自社のプロフィットを増やせるからだ。彼らが巧妙だったのは、国と国との境界が溶けていくことを人類の博愛主義的な目線で語っていたことだ。隣人と仲良くすることはいいことだ、というふうに。また人々にもグローバリズムは自然現象だと受け入れる空気があった。しかしグローバリズムの実際は貧富の差を悪化させさらにそれを固定化させるだけの陰惨なものだった。
グローバリズムは自然法則などではなく一国の長の思惑で決まるということが明らかになってきている。米中の緊張が極度に高まれば、中国は米国債を手放すだろう。なぜなら金利を一気に上昇させ借り入れコストを高くすることが米経済に大きな悪影響を及ぼすことができるからだ。
もちろん米経済が弱体化すれば、中国自身も痛みを伴う。しかし昨今の米中首脳の言動をみていると、自国経済を拡大させることよりもメンツを大事にすることのほうに力点をおいているように思われる。トランプ政権は中間選挙で絶対に罷免されないようにするというメンツ。中国は今まで欧米列強に苛められた仕返しとして。
貿易戦争は、結果的に高くつく。たとえば尖閣諸島の国有化のあと中国は日本製品不買運動を行ったが、結局現地の雇用を失うという理由で不買運動は急速に収束した。一つの製品が一国だけで生産され消費されるということがほとんどない現在、不買運動の効果など一時のガス抜き程度でしかない。
怖いのは、ガス抜き程度でも国家レベルで「やる価値がある」となったときだ。そして米中はそのガス抜きの結果こうむる自国へのダメージを吸収できる力がある。大国は力を振りかざさねば気が済まないのは歴史が証明している。
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