昼寝を決め込む株式市場
株式市場がここのところずっと静かだ。様々な指標で米国経済の力強さが伝えられるなか、 米国の利上げという市場にネガティブな材料と、報道される良好な数値というポジティブな材料とが打ち消し合っているのだろう。北朝鮮問題も一服、これといって買う材料も売る材料もないといったところか。
来月で今年も半年を過ぎるが、弊社が年初に想定していたことに近い展開となっている。すなわち、景気後退が始まるわけでもなく、かといって特段大きな上昇が見られるわけでもない。ニュースは活況を伝えるが、それを実感しているのは一部の人だけ。
景気がいいのは、アメリカがかつてのように気前よく消費してくれているからだ。アメリカが気前よく消費してくれているのは、かつてに比べれば超低金利状態がずっと続いており中央銀行がしこたまお札を刷りリスク資産を買っているから。また家計負債の7割を占める住宅ローンの延滞率が2007年の不動産バブルが弾ける前の低水準を保っており、自動車ローンや学生ローンの延滞率は上昇しているものの今すぐ家計消費にインパクトをもたらす程度には膨れ上がっていない。
そしてアメリカの消費が上がっているのは石油価格が安定しているからに他ならない。石油価格が安定しているのは、アメリカのシェールオイル掘削技術が発達しているからで、価格があがると機械を動かして生産し高値で売り、価格が下がると機械を休ませ次の価格上昇を待てば良いという具合に価格調整弁的な役割を果たしている。
安定した石油価格は安定した消費を生み出す。安定した消費は負債への抵抗感を少なくする。景気後退に陥るのはたいてい家計が負債でまわらなくなるときだが、今は全世界がアメリカが消費/債務に依存しているからである。これが現在の世界経済のざっくりとした理解である。消費が借金によって底上げされている間は景気はいい。しかし弊社の見立ては「資産バブルはピーク付近にあり、これから利上げによってマネーの量が収縮していくなかで思いもよらない事が起きるかもしれない」からややディフェンシブなポートフォリオにしていおくのが良いと考えている。
取り上げられることの少ない原油価格
米国がイランとの核合意離脱を表明した。この合意は日本など他国も参加しており米イランの二国間で行われているものでないのでトランプ大統領の国際政治のマナー無視がメディアに深刻に、しかし面白おかしく取り上げられることだろう。またこの合意離脱でアメリカは凍結していた「強力な」経済制裁を再開するとしている。イランは中東ではサウジアラビアに次ぐ産油国。制裁が強力であればあるほど投機筋の動きで石油価格は一気に上昇してもおかしくない状況だ。
前述したように、世界経済を支えているのはアメリカの好調な消費であり、それをさらに横から支えているのは超低金利と原油価格の安定である。超低金利状態は米連銀が1回あたり0.25%、3-4回の利上げをするかどうかということに尽きるので、アメリカの米連銀が注意深く利上げを行っていれば特に景気に悪影響を与えることはない。原油価格の動向についてはアメリカ経済、ひいては世界経済に大きな影響を及ぼすが、その取り扱いは地味である。
しかも原油価格が上昇を続ければアメリカのインフレ期待も一層高まり利上げペースが加速するかもしれない。毎日眺めているものではないが、原油価格が下がれば景気は安泰、原油価格が高騰すれば景気に悪影響があると考えていたほうがいい。原油は先物市場があるので投機的な動きによって容易に1バレル100ドルを超えたりする(その逆に、1バレル30ドル台も2年前経験している)。