中国債券市場、成熟するか
金正恩とドナルド・トランプの歴史的会談を見ながらこの原稿を書いている。どいういった合意がなされるのか、あるいはなされないのか。気の早い投資家は朝鮮戦争にピリオドが打たれ北朝鮮経済が開放されたら、現在のミャンマーなどのように投機的マネーが集まり一儲けできるに違いないと勇んでいる。さすがにそれを考えるのは時期尚早だとしても、投資家にとっての懸念事項が一つ消えることはいいことだ。
さて、13日はいよいよ今年2度めの利上げが行われるかどうかの発表がある(スケジュールの関係で本稿は12日に書いている)。下馬評としては
今年4回の利上げ – あるかも
今年3回の利上げ – ほぼ間違いない
今年2回の利上げ – ないとはいい切れない
くらい。すなわち3回の利上げは市場が織り込んでいるところであって比較的高いインフレを勘案するとほぼ間違いなく利上げが行われると踏んでいることがわかる。4回の利上げとなると、1回の利上げ幅が0.25%であるから4回で1%の利上げとなる。今までQEでの債券購入などで膨れてきた資産バブルに向かい風となる水準であることには間違いない。
そして気になるのが中国。中国債券市場はここ数年で一気に自国GDPと同規模の11兆米ドルまで膨張した。2014年まで中国政府が債券発行体の倒産を認めにくくするようなルールが存在したが、それもすでに存在しない。実際に今年中国では12社の債券発行体がデフォルトを起こしている。債券市場においては発行体がデフォルトを起こすのは特段珍しいことではない。しかしその数が増えると別である。投資家が市場に抱くイメージが悪くなれば、今のような低金利で債券発行ができなくなる。
中国ではシャドー・バンキングへの締め付けも厳しくなっている状況で、アメリカの利上げによって深刻な打撃を受けることになるだろう。とはいえ中国債券市場は個人投資家がほとんどで、最近ようやく外国投資家も受け入れ始めたばかりだ。成熟とは程遠く、投資家の中には「どうせ最後は中国政府が守ってくれる」という”政府保証”のような考えを持っている人が多い。投資にはリスクがつきもの。今までは高い成長率と中国独特の国家管理型資本主義がリスクから目を背けさせている。
ちなみに弊社のポートフォリオにも中国関連の社債はリスクレベルに応じて1-5%入っている。中国債券市場のリスクを説きながら同時に中国債券に買いを入れ続けるのは矛盾しているように思われるかもしれないが、中国債券が大きく傾くときは他国の債券以外の資産クラス(たとえば日本の株式)も傾くことになることが予想される。投資で勝率を上げるためには分散が必要となるので、0/100ではなく50を基準として40にするのか60にするのかという考え方が必要となる。
中国の債券市場が成熟するためには、さらなる外国人投資家を受けいれた上何度か厳しい試練をかいくぐる必要があるだろう。