トルコの金融危機について
直接的にはトルコによるアメリカ人牧師の拘束とトランプ大統領がそれに対する報復として鉄鋼・アルミに数十パーセントの関税をかけたことが原因だと言われているが、そもそもトルコのエルドアン首相が再選したいがために、インフレが加熱しているのにもかかわらず低金利を据え置いたことが要因だ。インフレがますます激化し対米ドルでトルコリラは暴落、中央銀行は17%まで法定金利を上昇させている。
奇しくも数ヶ月前アルゼンチンがほとんど同じ状態に陥った。当局は通貨防衛とハイパーインフレ阻止のため、為替介入・利上げ・財政緊縮措置を取り入れてなんとかその場をしのごうとしている。今回のトルコの金融危機もアルゼンチンの金融危機ももう教科書からそのまま出てきたような金融危機であり、またトルコのユーロ全体に信用問題が波及するという点とアルゼンチンがブラジルを始めとする主要南米諸国に信用が波及するという点まで同じである。
少し違うのはトルコがビジネスセクター・不動産セクターを喜ばせて再選したいがために低金利を据え置いたままにしたのに対し、アルゼンチンは米利上げ観測の中で国のファイナンスを債券投資に頼っていた、という点である。どちらにしろ最終的にはトルコはユーロに頼るか、IMFに頼るかしないとこの危機は乗り越えられないだろう。今のところエルドアン首相は強弁しているが、どこかでより大きな存在と政治的な合意ができない限りこの混乱は続くだろう。
危機が長引けば、もちろん投資家はリスクオフの姿勢を取るだろうからトルコを発端としてリスクの高い新興国からは投資金が逃げていくことが考えられる。
規模は全然違うものの、アメリカはこのトルコの状況を他山の石とするべきだろう。トランプ大統領も再選のために低金利が望ましいと考えているフシがある。政治家が自分の野心のために自国の金融政策に介入すると、国民が疲弊してしまう。
米中にらみ合い、長期化か
中国と米国の関税報復合戦だが、おそらく水面下での”落とし所”は実務レベルでは話し合いはされているだろうが少なくとも表面的には全く収まる兆しがないどころかむしろ激化している。中国が生産してアメリカが買うという、過去10年の世界経済を引っ張ってきた両エンジンがゆっくりと止まりつつあるということだ。
アメリカは中国に対しハイテク商品を狙い撃ちして中国のIT覇権を止めようとしている。中国はアメリカに対し貿易金額の上では中国はアメリカに同等の報復関税をかけられないから、中国に進出している米企業に嫌がらせをしたりするだろう。余談だが、尖閣諸島問題で日中の緊張が高まったとき中国に進出していた日系企業は些細な手続き上の不備を突かれたり、税金を余計に持っていかれたりと細かな意地悪をされていた。中国は法治国家ではなく人治国家である、ということを再認識させられ、中国から撤退を決めた企業も少なくはない。
アメリカの給与の伸び率も鈍化しており、アメリカが旺盛な購買力を維持して景気拡大に貢献できるのも今後はそれほど長くはないだろう。
行動心理学からは逆張りが正しい
弊社の今までの経験からすると、こういったネガティブなニュースが駆け回ると以下のような問い合わせが増える。
- 積立を停止/解約したほうがいいのではないか
- ポートフォリオのリスクを下げたい
- マーケットの情報をより詳しく教えてほしい
1つ目の停止/解約については、積立原資に全く問題がないにもかかわらず積立金額を減額したいというお問い合わせだ。これは、ブログでも何度も取り上げたとおり敗者の戦略である。気分によって積立額を上げ下げするのは、その時は不安は取り除かれるが積立投資家がもっともしてはいけない愚行だ。これと全く逆なのが、リターンが好調だから積立額を増やす、というものだ。積立投資で勝ちたければとにかく同額を継続するしかない。2つ目も同じだ。行動心理学は100のトクと200の損は同じ心理的効用があるとしている。痛みのほうが大きいのは人間が逆らえない本質的な性ではあるが、理性でそれを抑えねばならない。
3つ目のマーケット情報を取りすぎるのも問題だ。普段マーケット情報に接していないのに、急に取り始めると必ずといっていいほどネガティブな情報ばかりが目につく。結局、マーケット情報に先入観なくフラットに接することはプロである私どもでも難しく、ましてや一般投資家の方であれば悪い情報探しに躍起になり結局前述の1,2に帰着することとなる。
積立投資においては賢くある必要は、全くない。