先月お伝えしたトルコ、アルゼンチンは寸でのところで持ちこたえており、急激に状況が悪化している様子はなく、さりとて改善しているわけでもなく不思議な均衡を保っている状態が続いている。とはいえ両国の政策当事者としては繰り出す一手一手が国家破綻の端緒となりうるわけで、しばらく非常な緊張が強いられることとなる。
しかも米国の金利上昇→新興国からの投機マネー流出という流れは米連銀が金利を上昇させていく以上は続いてしまう。トルコやアルゼンチンは米ドル上昇リスクにもっとも敏感な場所にいたので犠牲になるべく犠牲になっただけで、トルコやアルゼンチン以外にもスリランカ、南アフリカ、パキスタン、エジプト、トルコ、ウクライナなどが次の危機の震源地になりうるだろう。これらの国々は共通して外国から借金をしており、米金利上昇によってかつて高いリターンを求めた資金が潮が引くように米国に戻っていく。経済を外国資本に頼らねばならないということは、その国の浮沈を年金基金やヘッジファンドが握ることになる。
ただし、これらの国はそうはいっても対外債務も天文学的数字ではないし仮にデフォルトしたとしても国際経済に与えるインパクトはそこまで大きくない。やはり問題になるのは米、日、欧そして中国の4つの経済圏である。
そして今、このうち米中が経済の足の引っ張りあいをして共倒れし更にはそれにつられて日欧も倒れてしまうかという状況のただ中にある。トランプ大統領の「緊張と緩和」手法は彼の長年のビジネス慣行がそうさせるものなので、中国含め日本を含めてどこの国に対しても同じことをするだろう。アメリカが中国やイランにしていることを日本にし始めるとどういう対応をするべきか、思考実験しておくのも悪くない。
リーマンショックから10年
金融の歴史ほど忘れられやすいものはない。債務が膨張し、資産が資産を産み、人はそれに踊り、いずれ音楽は止まる。踊っていた人々は大きな債務に苦しみ、その後数年は債務返済のために奔走することになる。しかし、その債務返済が済んでしまって数年すれば元の木阿弥。「前回は運が悪かったな」とでも言ってまた大きな「ヤマ」を張ろうとする。規制緩和、低金利、そして忘却が再びバブルを発生させる。なので次の経済後退は必ずやってくる。問題となるのが「いつ」そして「どれくらいの規模で」である。リーマンショックから10年を経て、次のバブル予測が語られているが、大方の予想は
今後1-2年のうちに
前回の規模よりはマイルドなもの
であった。今後1-2年というのは、米金利上昇によって資金繰りに詰まる企業が現れ、投資拡大よりも債務返済に追われることになる。
前回の規模よりマイルドなものになるという予想は、金融機関の資本増強がかなり進んでおり金融危機が引き起こされる可能性は前回よりもずっと少ないことがあげられる。
しかし前回の金融危機は米金利が5%、また資産買取や減税などいまよりずっと多くのツールがあった。たとえばもし来年景気後退がくれば、これらのツールをどこまで使えるかは疑問である。
ポートフォリオ
中国を含めて新興諸国がもう少し低い水準になってくれば、買い増ししていく可能性を検討している。どちらにしろ米国一強の時代はしばらく続くだろう。