世界経済に死角無し?
世界経済に対する見方は今のところ非常に楽観的で、各種指標は絶好調となっている。特にアメリカでは連銀の利上げ指標となっていた「失業率5%未満」を継続して達成しており、賃金の上昇にもようやくプラスのインパクトを与えるまでになってきた。また新興国でも中国は資本流出規制により国内経済が安定化し、不動産バブルが崩壊するリスクはやや遠のいた。また韓国では2月に過去最高の輸出増加率を記録した。ヨーロッパでもデフレから脱却しインフレには至らないリフレーションが姿を現しつつあり、米国に比べて出遅れた株式市場に好影響を与えるのもそう遠くはなさそうである。
物価が世界経済に死角なしと言えなくもない状況であるが、リーマンショック直前がそうであったようにマーケットが楽観的になり過ぎたときこそ危うさが忍び寄っていると考えるべきである。
まず、アメリカの株式市場は高すぎる。10年間のインフレーションで調整した後のPE(シラーPE指数)だと、1929年のダウバブル崩壊直前そして2000年のインターネット・バブル直前につぐ高さとなっている。企業は絶好調の業績をあげているが、それに対する評価が高すぎることもあり正当化できる水準ではなくなりつつある。それと比較すると、ヨーロッパや日本はまだ正当な水準である。
また、リーマンショックの景気後退局面から来年で10年となる。一般的に景気サイクルは4-7年の間に繰り返される。信用(借金)が膨張し、それが人々が支払えない水準にまで達した後に収縮するサイクルが4-7年ということになる。人間は大体、4-7年で以前の「借りすぎ」状態を忘れてしまう。実際にアメリカでは自動車ローン、カードローンの焦げ付きが最近目立つようになってきた。
そして連銀が従来のハト派からタカ派に寄ってきていることだ。今後数年で利上げをしておかないと、次の景気後退局面において金融政策のオプションが少なくなるという焦りが見て取れる。利上げをすると、企業の借り入れコストは高くなるから当然業績にも影響を与え、ひいては株式市場にも影響するだろう。
とはいえ、直近ですぐに景気後退局面入りする可能性は低い。様々な指標を勘案すると、次の四半期で景気後退(GDPが2期連続マイナスとなること)する可能性は20%程度とみてよい。
モデルポートフォリオ
引き続き、弊社のポートフォリオでは世界株式に分散しつつアメリカへの投資傾斜をやや少なく(リスクレベルに応じて10-15%)した。そして削った部分を債券投資に充当している。景気上昇局面とくらべて、やや弱気なポートフォリオとしている。
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