アメリカのインフレ速報値が9.1%と、1981年ぶりの高い値となった。ガソリン代は米国全土で1ガロンあたり5ドルを超えて上昇を続けている。場所によっては6ドルを超えており、10年前に1ガロン4ドルを超えたときに全米が大騒ぎして「アメリカの貯蓄がオイル価格に吸い取られてしまう」と言っていたのに、もはや成すすべがない。バイデン政権への支持率も非常に低く、米国民が疲弊しているのが見て取れる。 「世紀の空売り」で描かれたヘッジファンド「サイオン・アセットマネジメント」のマイケル・バリーも「アメリカの貯蓄率はこのインフレが来る前から下がっている。貯蓄が底をついたらリセッション(景気後退)かつインフレという最悪のシナリオが起こる。そうなると、今回の金融市場の下げはまだ道なかばでまだまだ下げる余地がある」と発言している。 Corporate Profits May Be the Next Thing to Break – Bloomberg コロナで「需要が足りない」ところに一気に緩和、膨張したマネーがロシア・ウクライナ戦争によって需給関係が逆転し「供給が足りない」インフレとなった。この流れが今すぐに沈静化することはなく、6-12ヶ月かかってようやく事態が収束に向かっていくものと思われる。 今月の米連邦準備制度理事会で先月の0.75%の利上げを決行した。急速な利上げは金融資産にとってネガティブな影響を与えるため投資家は一気に身構えたが今月はなんと1.0%の利上げをするのではないかとまで言われている。連銀は年末までに3.5%前後にまで政策金利をあげていくのではと想定されている。9%のインフレで3%の利上げであれば、まだ6%のたわみが純インフレ率として残っているわけで理屈上は3.5%では足りないが、利上げによるハードランディングをなんとか避けたいがため連銀のレバーが一気に動くことはない。 Traders bet the Fed could raise interest rates by 1 percentage point this month 利上げによる景気への悪影響を避けたいのはアメリカだけではない。日本を除く主要各国も利上げは行いつつも急激な利上げには慎重な姿勢を示している。 すなわち世界はまだまだ続くインフレに当分の間耐え続けることになる。 |
日銀は利上げをするのか
円安が続いているが、これは何よりも各国との金利差が原因となっている。また各国は日本のために以前のような協調介入で円買いをして防衛するというようなことはまだこの水準ではしてくれないだろう。すなわち日本だけでこの円安を食い止める必要があるが、日銀は引き続き緩和政策をとると宣言している。需要が物価を引きあげられるのではなく、円安で物価が引き上げられてむしろ需要が蒸発している。 今後、企業収益の悪化がメディアを騒がすことになるためますます日銀は利上げができないというジレンマに陥ることとなり、円安に歯止めがかかるようなシナリオは考えつかない。利上げをせずに円安で国民生活を破綻させるか、利上げをして企業業績を悪化させるかの2択しかないが、今のところ日銀は前者を選択するようだ。 |
ポートフォリオ
下がる時価総額、上がる積立額に焦る前に 弊社の標準的なポートフォリオでも時価総額はここ数ヶ月下落の一途をたどっている。すなわち弊社のお客様のポートフォリオの時価総額も下がっている。半年前と比較して10-20%くらい時価総額が下がっていると想定される。 またこの円安によってドル建ての積立に大きな割高感を感じてらっしゃることも事実だろう。毎月5万円で済んでいた積立が円安になって6万円で請求がくる… といったような。 時価総額が下がっているなかで積立を継続する意味があるのか? そういう疑問を持たれても不思議ではない。積立投資の最大の意義は、円に偏りがちなドル資産を作ることにある。また積立投資とすることでドルに変えた資産の効率的な運用を目指す。稼ぐ通貨はほとんどの人が円で、保有する通貨も円だろう。また不動産など主要な資産も円建てで保有しているかもしれない。 これだと日銀の舵取り一つで資産の行方が決まる。円の財布とドルの財布を分けて持つことによって円と心中しなくて済むというのが積立投資をする理由だ。私どもの観察だとオイルショックやバブル景気を経験している方ほどドル資産を持つことの意味を理解されており、若い方ほど安定的な日本の国力を享受しているためかドル資産を保有する意義にピンとこない方が多いようなイメージである。 しかし現在もヘッジファンドが日本国債を売って日銀がそれに買い向かっているが、もし防衛に失敗すると今どころではないインフレが日本を襲う。積立投資は単なる資産運用というよりは、円資産に偏りがちな日本人の手軽な防衛策でもある。 何が何でも積立投資を続けろと言っているのではない。レポートで「今月も先月と比べて下がったなぁ、ドル建ての決済もキツイし、解約しようか」と数字のみをみて脊髄反射するくらいなら積立額を減らしてでも愚直に積立をしていたほうが将来の保全となるということを強調しておきたい。 |
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