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まずはオフショアの定義をおさらいしましょう
オフショアとは税金が無い、または税率が著しく低い国や地域のことを言います。オフショア(Offshore)=沖合いという意味です。海の上の船上ではどこの国の税金も掛からない、という意味を持ってそう呼ばれています。
オフショアと聞くとすぐに「脱税」や「マネーロンダリング」のような悪いイメージを持たれる方がいますが、オフショア自体は、ただそういう国や地域が存在するという事を言っているだけで、裏社会の話ではありません。
代表的なオフショア地としては、香港、セーシェル、ケイマン、マン島、サモアなど様々あります。
似たような流れで使われる言葉にタックスヘイブンがありますが、ほぼ同義語です。タックスヘイブンはTax Haven、租税回避地という意味です。ヘブンと聞いて税金天国と考えている方もいらっしゃいますが違います。
オフショアにおいては、各種行政規制などが必要最小限に抑えられているため、日本には存在しないような金融商品がたくさんあります。高利回りの商品もたくさんある為、世界中からお金が集まり資産運用がされています。一説によると世界の資金の半分以上がオフショアで動いているとも言われています。
以上の基本的な情報を元に、オフショア地での投資のメリットとデメリットをまとめてみましょう。
オフショア投資のメリット
メリット①豊富な金融商品への国際分散投資が可能
日本にはないユニークな商品が沢山ある上に、様々な国の通貨で運用する事ができる為、為替変動リスクを抑えたり、資産分散のメリットもあります。オフショア投資商品の例としては以下の様なものがあります。
◯オフショア生命保険
ユニット・リンク(Unit-linked)やインベストメント・リンク(Investment-linked assurance scheme、通称ILAS)という言葉を聞いたことのある方もいると思います。ユニット・リンクの「ユニット」とは、投資ファンドの口数のことを指し、この投資ファンドの口数と連動(リンク)している保険商品であるためユニット・リンクと呼ばれたり、または投資リンク「インベストメント・リンク」と呼ばれるようになりました。
香港で販売されているユニット・リンク商品はそのほとんどがオフショア生命保険会社から販売されています。投資商品なのになぜ保険会社から発売されているかというと、ほぼすべてのユニット・リンク商品には1%の生命保険が付加されているから。
あえて1%の生命保険を付加しなければならなくなったそもそもの理由は、かつてのイギリスの税制によります。このユニット・リンク型保険を使って投資をしたとしても、解約または投資金を一部引き出すまでは課税されませんでした。
ユニット・リンク商品の中身は投資そのものであるが、投資で得た利益はキャピタルゲインとしてみなされず、死亡時の保険金とみなされます。香港ではキャピタルゲインに対して課税されませんので、香港であえてユニットリンク商品に投資するメリットはその管理のし易さと、ファイナンシャルアドバイザーを有効活用できる点にあると言えます。日本で販売されているファンドラップ口座と異なるのは、ファンドを売買してもリターン(利益)に対する課税を解約するまで繰り延べできることです。
◯貯蓄型生命保険
貯蓄機能を持った生命保険です。保障額と非保障額の2つの合計で時価評価額が決まります。非保障額は保険会社の運用能力に左右されます。日本国内において外国の生命保険等に加入する事は違法です。ただし、海外で保険に加入する事はできます。
◯ヘッジファンド
私募のファンド。形式としては個人的にファンド運用者に資産運用を委託します。投資信託と違い、不特定多数から募集する事はできません。
◯元本保証ファンド
元本を保証したファンド。105%元本保証ファンドなどもあります。
メリット②秘匿性
ほとんどのオフショアにおいてプライバシーの秘匿についてはかなり厳重です。基本的に日本政府(国税)からの要求があっても、預金者等の個人情報を開示させる事は難しいと言われています。法人を立てて資産運用する場合、ノミニー制度なども活用できます。
ただ、最近はHSBCなど世界有数の銀行や金融機関において、マネーロンダリングに対する規制が厳しく、このような犯罪の疑いがある場合はその秘匿性が守られるとは限りません。
※確定情報ではないですが、関係筋によると、2017年からHSBCは日本政府からの預金者情報開示要求に全て答えるようになるという噂があります。
メリット③相続問題を回避
共同名義・受益者指定・契約者地位の譲渡などの制度を利用する事により、投資家に万が一、死亡、ご病気などがあった場合、その後の相続手続きがスムーズにいくようなオプションが用意されています。
また、HSBCでも共同名義の口座を持つことが出来ます。例えば夫婦で共同名義口座を持っていた場合、そのどちらかが無くなったとしても、その遺産は共同名義口座にあり、残されたものが引き出し可能です。
メリット④税制上のメリット(非居住者限定)
オフショア地においては、キャピタルゲイン(株式などの譲渡益・値上がり益)などに対する課税が非課税(日本の場合、株式譲渡益・利子に対する税率は20%)という税制上のメリットもあります。その為、同じ運用をしていたとしても、日本国内で運用していたのとオフショア地で運用していたのでは大きな開きが出ます。
また、そもそもオフショア地では世界中のファンドから商品を選択可能ですので、収益性の高いファンドを選んでいく事が出来ます。
ただ、この税制上のメリットは日本居住者には適用されません。なぜなら、日本居住者がオフショア地で上げた利益については日本において確定申告を行い、納税する義務があるからです。日本での納税義務をなくす為には、非居住者になる必要があります。
国税庁によると、居住者の定義は以下のように記載されています。
「居住者」とは、国内に「住所」があり、または、現在まで引き続いて1年以上「居所」がある個人をいいます。居住者は、所得が生じた場所が国の内外を問わず、その所得についてわが国において所得税を納める義務があります。
上記に当てはまらない個人を非居住者と言います。これは普通の人にはなかなか難しい条件だと思いますので、税制上のメリットを享受するのは実質的には難しいと言えます。
オフショア投資のデメリット
デメリット①言語
多くの方が一番つまづくのはこの言語の問題ではないでしょうか。
例えば香港の金融商品を契約する場合、使用言語はもちろん英語です。商品を提供しているプロバイダーは香港の会社であったりマン島の会社であったりしますが、WEBは英語表記、通常の会話や商品パンフレット、契約書も当然英語で書かれています。
商品契約前には必ず契約書の内容を理解しておく必要があります。特に気をつけておくべきなのは以下の点でしょうか。
- 解約出来る時期と解約手数料
- 一時停止や減額出来る時期、金額、ペナルティ
- 元本保証型どうか
※実際、元本保証で高利回りの商品は無くはないですが、投資の原則はハイリスク・ハイリターンですので、利回りが良く元本保証を謳っているものには気をつけた方がいいでしょう。
これらの内容を英語で理解するのは慣れない人にとってはなかなか大変です。英語に自信の無い人は信頼できるIFAから日本語でしっかりと説明を受けましょう。
但し、ご注意頂きたいのは、パンフレットや契約書の日本語翻訳があったとしても、プロバイダー公式のものでない限り、英語版の内容が優先されるという事。IFA自らが作った日本語資料はあくまで参考資料であり、実際と違う部分があったからと言ってプロバイダーを訴える事は出来ないことにご注意ください。
逆に、これらのハードルを乗り越えた人だけが高利回りのオフショア商品のメリットを得ることが出来ると言えます。
デメリット②会社(金融機関)に馴染みがない
日本に住んでいる限り、海外の金融機関の名前を聞いたことが無いというのはある意味しかたのない事です。しかし、インターネットで何でも調べられる時代ですので、自分が契約しようとしているプロバイダーの事は事前にしっかり調査しましょう。その会社が信頼できるかどうかの判断基準としては格付けがあります。
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、ムーディーズ(Moody’s)などでその金融機関の格付けをチェックしてみてください。格付けや、ウェブサイトの作りこみ方、世界での拠点数などである程度の判断は出来るでしょう。
デメリット③政治的安定性
国や地域によりますが政治的な安定性が低い地域もあります。例えば、現地においてデモやクーデターなどが起きて外国人の預金は全て没収するとかいう宣言がされてしまえば預金が無くなってしまう可能性はゼロではありません。しかし、日本においても借金が何百兆円とか我々の預金は安全か?と考えると、海外に資産を分散するというリスクヘッジが大事なのでは無いかと思います。
香港の政治は一国二制度の原則に基づき、1997年の返還後から50年は高度の自治権が認められていますので、香港の安定性は比較的高いと言えるでしょう。
以上、オフショア投資のメリットとデメリットについてまとめましたが、いかがでしたでしょうか?思い描いていたものと違った方もいるかもしれませんね。メリットとデメリットをしっかり理解しておけば、うまい話に乗せられておかしな商品を契約してしまうことも防げると思いますので、これらの事は是非頭に入れておいてください。
パナマ文書流出事件って?
関連記事として、2016年4月より世間を騒がせているパナマ文書流出事件についてはこちらの記事で解説しています。
パナマ文書流出事件の簡単な解説〜オフショア=脱税?〜