分散された株式であれば統計的に7−8%の利回り
今回は、オフショア積み立て投資で年利10%はカタイのか?の第3回目、「まずは5%を期待するべき理由」について説明します。前回の記事の最後に、期待する利回りについての正しい理解として、
”株式などリスク資産は等比級数的に膨張しがちであるが、数年に1度バブルがはじけて急落を食らうこともある。ただし長い目で見れば7−8%の利回りが期待でき、手数料差し引き後で5%を目指す”
となると書きました。5%を期待するべき理由は単純明快です。十分に分散された株式資産は過去の統計から7-8%の利回りを提供しているからです。※世界株式平均(MSCI World Index)は1994年1月から7.14%の利回り、アメリカのS&P500は1952年から10.26%の利回りとなっています。とは言え、始める年によって利回りは前後してきます。
しかし、通常プラットフォーム・フィーとアドバイザリーフィーの合計で2%前後チャージされますから7-8%の利回りから2%を減じて5-6%が実際にあなたにもたらされる利回りです。※ちなみに、弊社IFAスイッチのサービスを利用するとアドバイザリーフィー1%がゼロになりますので利回りは更に向上します。
バブルは繰り返される
しかし、この利回りについても先ほどと同様に単純な右肩上がりを期待するべきではありません。積立投資の主戦場となる株式市場は常に膨張と崩壊を繰り返しています。直近のバブルはアメリカのサブプライムローン利用による不動産市場の膨張と、リーマン・ショックに象徴されるその崩壊でした。
それより前には何の実績もないIT企業に投資金が集中したドットコムバブルがあります。バブルが繰り返される要因の一つは、
何の労働もなくリスクテイクもなく自分の資産が増えていっているという事実が人を熱狂させ正常な判断を狂わせること、
そして
その熱狂の前には中央銀行と政府が人為的にインフレを起こすような政策をとっていること
があげられます。
景気を向上させるというのは中央銀行と政府の宿命です。制度や教育を変更してその効果を気長に待てたらいいのですが、移り気な国民の人気を得るためにも即効性のある”インフレ期待”で対処してしまうものなのです。
特に中央銀行はマネーの量をコントロールすることでインフレを起こし、”もしかしたらインフレで来年値上がりするかもしれない”と人々に思わせて購入を急がせます。また政府がその政策を後押しします。
たとえば直近のサブプライムローン問題では政府がサブプライム融資を受けやすくするため規制をゆるめたり、中央銀行が政府の基準金利を十分に引き上げなかったりしました。しかし後から振り返ってこういう作為あるいは不作為がサブプライムローンの原因になったのではないかと云々することはできますが、当時はまさかこのような事態になると想像していた人はごく一握りだったでしょう。
投資家はインフレを上回るリターンを追求し彷徨う
そしてインフレが期待されると、投資家はリスク資産にそれ以上の利回りを求めます。2%のインフレであれば、たとえば債券だとプラス2%の利回り、債券よりもリスクが高い株式であればプラス5%の利回りを求める、といったように。
このように、中央銀行が人為的に起こそうとしている限り、マネーはそれ以上の利回りを提供するリスク資産を求めてさまよいます。割安だと思われるところにマネーが集中し、その結果割高だと思われる水準を超えて資産価値が上昇していくことがあります。たとえば2008年に原油価格は1バレル140ドルまで上昇し、2015年の年末には40ドルを切る水準となっています。
たった7年の間に70%価格が下落したわけですが、人が消費する原油の量が70%下落したわけではありません。投機的な思惑が交錯し暴騰と暴落が起こったのです。株式市場などリスクある市場を投資対象としている限り、数年に1度のバブルは必ず経験しますしそれを避けようとしているとよりよい投資成果は見込めません。
アドバイザーもあなたも、株式市場の将来を見通す千里眼は持っていないのです。
”今が買いどきかな? 売りとその時々で判断している投資家は、株式市場の平均より5%以上低い利回りしか上げられないことが分かっています。※Dalber’s 2010 Quantitative Analysis of Investor Behaviour
性懲りもなくなぜ同じことを繰り返すのだろう、と普通の感覚の持ち主であれば考えるかもしれません。しかし中央銀行が常にインフレを起こしたがっており、人々は自分の資産価値が減らないようにインフレを上回る利回りを提供する資産を求めるので、バブルは今後もなくなりません。
このように、過去の統計から紐解いていみると年利10%を期待するのは誤りだということが分かります。さて、オフショア積み立て投資で年利10%はカタイのか?(4)では、少し違った観点から10%がカタクない理由を考察してみましょう。
【オフショア積み立て投資で年利10%はカタイのか?シリーズ一覧】
第1回:年利の妥当な期待値
第2回:複利運用の誤解
第3回:まずは5%を期待するべき理由
第4回:本当にカタイものは0.05%程度