目次
10%の利回りがカタくないもう一つの理由
ここまで3回に渡って、「オフショア積み立て投資で年利10%はカタイのか?」というテーマで解説してきました。
第1回:年利の妥当な期待値
第2回:複利運用の誤解
第3回:まずは5%を期待するべき理由
そして前回は、過去の統計を紐解きながら10%の利回りを期待するのは誤りだと指摘しました。次に、違う観点から10%の利回りがカタクない理由を説明します。
リスク抜きにリターンだけを計算する事は出来ない
たとえば年利10%複利ですと、100万円を投資すると7年目終わりには194万円になっています。元本100万円に対して利回りが94万円出ている計算ですね。7年待ってほぼ倍になることがカタイ金融商品があるとすれば、今現在その金融商品にはどれくらいの価値があるでしょうか。質問の主旨が分からない?それではもっと簡単にしましょう。
1年後に10%の利回りが出ることがカタイ金融商品があるとします。それは1年待ったら10%増えて110万円で戻ってくることになりますが、この金融商品が満期から逆算して1年前の今日、100万円で取引されることはありません。
時間をおカネに変えるのが投資だとすれば、1年で10%の利回りが出る裏には相当なリスクが潜んでいるからです。
カタい日本国債の利回りは0.05%
たとえばリスクがない日本国債であれば、1年後に得られる利回りは0.05%程度です。すなわち100万円が100万500円になって戻ってくるのです。100万円も投資をして500円しか利回りとして戻ってこないのであれば、投資妙味に欠けますね。
あなたが将来を心配している日本政府の国債は金融市場の中ではどちらかというと”カタイ”部類に入ります。
日本国債などの金融市場で本当に”カタイ”とされているものはこの程度の利回りしか提供してくれないのです。
ですので日本政府の行末を心配して海外投資をするというのは、金融的に言うとプールで溺れるのが怖いからハワイ沖で泳ぐと言っているくらい頓珍漢なことです。
ギリシャ危機の時の国債利回りは70%
また、反対にギリシャの財政危機が表面化した2013年にはギリシャが発行する満期1年の国債の利回りは70%まで上昇しました。すなわち当時ギリシャの1年物国債を購入すると1年間で70%の利回りを確保できることになります。ただし、ギリシャが財政破たんしなければ、という前提ですが。
破たんしてしまえば利回りのみならず元本も戻ってきません。
あれだけ利回りが上昇したということは、その当時はギリシャが破たんしないでいることは誰も信用していなかったのですね。ギリシャが破たんしてユーロ圏から離脱、使用通貨がユーロからドラクマに戻るかもしれないというタイミングですから、到底”カタイ”とはいえず、 金融史上まれに見る”ヤバイ”状況でした。
もしカタくて利回りが大きい投資があったらすぐに食い尽くされる
ですので”カタイ”投資で将来も大きく利回りが稼げるというような都合のいい話はないのです。逆にそんな都合のいい話があったとしても、生き馬の目を抜く金融市場参加者に1秒で食いつくされてしまいます(今は人工知能が取引をする時代ですから1秒以下でしょう)。
海外投資のお話を持ってきてくれた人が、その生き馬の目を抜く金融市場参加者である可能性は限りなくゼロに近く、仮にそうだとしてもあなたにそのお話をしている間に他の誰かにその話を持って行かれているでしょう。
きちんとリスクテイクをした結果として、年利10%になることはあっても最初から年利10%がカタイものを選択することはそもそも不可能です。
インターネットの発達によって、 これだけ世界が緊密化しているのに他人を出しぬいて自分だけがオイシイおもいをすることはあり得ません。また世界全体が、かつての日本のようにデフレに陥って慢性的な需要不足となりマイナス成長が続く可能性だってあります。逆に技術革新によって更なる富が世界にもたらされ、黄金の時代が来るかもしれません。
それは誰にも分かりません。神様でない以上、将来を見通すことはできないのです。それでも夢を見たい?なら夢を見てもいいくらいの金額で家計の外で、いつなくなっても いいオカネとして趣味の一環として行ってください。
また、あなたに”年利10%はカタイ”とおっしゃる方は今後の世界経済を見通す力があるようですから、”わたしに金融商品の紹介をすることなんて呑気なことやってないでその能力活かしてアメリカ連銀議長か凄腕ヘッジファンドマネージャーになりなよ”とそっとオススメいたしましょう。
【オフショア積み立て投資で年利10%はカタイのか?シリーズ一覧】
第1回:年利の妥当な期待値
第2回:複利運用の誤解
第3回:まずは5%を期待するべき理由
第4回:本当にカタイものは0.05%程度