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コレじゃないポートフォリオの傾向
IFAスイッチには日々様々なご相談事が持ち込まれます。
その相談のなかでも少なくない数の方が”IFAが私のポートフォリオをいったいどう管理しているのか分からない。IFAに聞いても答えてくれない。もしかして私のIFAはポートフォリオ構築の手法についてよく分かってないのではないか”という質問をされます。
そしてそこには残酷な結論が。
はい、あなたのIFAはあなたのポートフォリオについてほとんど何も分かっていません。
あなたが老後の蓄えを託したアドバイザーは、契約当初からポートフォリオ管理について無知なのです。こういったアドバイザーたちは、契約時にはポートフォリオ管理の手法について知っているフリをするから余計に曲者です。
こういったアドバイザーが組むポートフォリオを弊社内では”コレじゃないポートフォリオ”と皮肉を込めて呼んでいます。コレじゃなポートフォリオはポートフォリオ構築のセオリーに沿ってないばかりか、クライアントの許容リスクレベルを無視していたずらにリスクの高いものを選択したりしています。
コレじゃないポートフォリオはひと目見ただけで分かる
たとえばフレンズプロビデントの積立型ラップ口座”プレミア”を例にとって、コレじゃないポートフォリオの典型をみてみましょう。ファンド名の隣のパーセンテージはポートフォリオ全体(100%)に占める割合です。赤字がコレじゃないポートフォリオに含まれる問題ファンドです。
誤解なきように申し上げますが、ファンド自体に罪はありません。そのファンドの使いどころが間違っているのです。家をたてるのにノコギリは必要ですが、肉を切るのには使わないですよね。ファンドは運用目的によって使い分ける必要があるのです。コレじゃないポートフォリオではノコギリで肉を切っているのです。
・一つのファンドだけでポートフォリオの半分以上を占める、一極集中型
コレじゃないポートフォリオ例
BlackRock World Gold 60%
Invesco Asian Equity 15%
First State China Growth 15%
Templeton Asian Bond 10%
資産運用の王道は分散です。分散してこそ、ポートフォリオの騰落が抑えられ運用ゴールに近づくことができます。分散とは逆の一点張りは資産運用をギャンブルに変えてしまう、やってはいけないことの最たるものです。
このタイプのコレじゃないポートフォリオはなぜか、資源(オイル、ガスなどのソフトコモディティ)やゴールドなどの貴金属に偏りがあることが多いです。また、新興国やMENA(中東、北アフリカ)、東ヨーロッパなど特に騰落の高いものも人気がありますね。これら騰落の激しい資産に集中して投資をすると、その資産と心中しなければなりません。
そのファンドが投資をするアセットクラスやファンドの規模にもよりますが、どれだけ規模の大きいファンドでも1ファンドにつき全体の40%以上を占めることになると問題です。
但し、あえて資源中心のポートフォリオ、ゴールド中心のポートフォリオを作るという説明をIFAからうけ、それに投資家が納得して運用しているのならそれは何ら問題ありません。
問題なのは、アドバイザーの好みだけでクライアントの意向を無視してポートフォリオが組まれてしまっていることです。そこにクライアントの意思が反映されていないことが問題です。
・MMFを長期間保有する、仕事してない型
コレじゃないポートフォリオ例
BlackRock New Energy 10%
Aberdeen Global Chinese Equity 15%
Invested GS Global Equity 20%
Fidelity America 25%
Henderson Horizon Asia-Pacific Property Equities 15%
JPMorgan USD Money Market 15%
MMF、マネー・マーケット・ファンドはキャッシュ同類のファンドです。私たちはMMFのことを一時的に資金を避難させておくため”パーキング(駐車場)・ファンド”と言ったりします。この低金利の時代ですから、MMFを保有しているだけでは資産運用にはなりません。それでもMMFを買うときは、
- 市場の騰落が大変に大きく、見通しが立ちづらい場合。大きなクレジットイベント(デレバレッジの引き金になるような事象。たとえばリーマン・ショックなど)がある場合です。私どもIFAスイッチはむしろ買い向かう場面ですが、MMFにパーキングしておきたい気持ちは分からなくはありません。
- 一括投資において、MMFから小分けにリスクを取っていく場合。たとえば全資金でまずMMFを購入し、その後20%ずつ株式や債券などリスク資産に振り替える場合などです。
- 2.とは逆に、特定の資産価格が上昇し過ぎた場合でかつ他に適当な投資先がない場合に次善の策としてMMFにパーキングすることがあります。
このように、MMFを購入する場面というのは例外的です。MMFはリスクを取らないゆえ資産が増えず、手数料だけが削られている状態になりますから、アドバイザーとしてはMMFへのスイッチングは慎重に決定する必要があります。しかし、なぜかMMFを長期間(目安として3年以上)保有しているポートフォリオが散見されます。MMFを長期間保有することは、アドバイザーとしての仕事をしていないのと同義ですのでコレじゃないポートフォリオ確定です。
・債券割合が多い保守的ポートフォリオなのに保有株式は全部新興国、アンバランス型
コレじゃないポートフォリオ例
Templeton Global Total Return 35%
Baring High Yield Bond 25%
Allianz BRIC Equity 15%
HSBC Chinese Equity 15%
Franklin US Government 10%
ポートフォリオ管理の基本はリスクの高い株式ファンドとリスクの低い債券ファンドのブレンドです。たとえば今後あまり大きなリスクを取りたくない人の場合だと株式ファンド30%、債券ファンド70%の割合でポートフォリオを組みます。
この例の場合、ポートフォリオは”リスクを取りたくない”ことが前提となっているため債券ファンドと一緒に買われている株式ファンドのほうはアメリカ大型株などリスクの低い(すなわち騰落の低い)ものを選択するのがセオリーです。しかしコレじゃないポートフォリオではなぜか騰落の高い新興国ファンドで占められています。
コレじゃないポートフォリオは時折よいリターンを上げることもあります。しかしそれは目をつぶってサイコロをふっているようなもので、きちんとしたポートフォリオ管理に基づくものではありません。ましてや、アドバイザーの腕でもありません。
それだけでなく、クライアントのリスク許容度を無視したコレじゃないポートフォリオは遅かれ早かれ目標から外れ、その軌道修正をしたくても手遅れになることがあります。
コレじゃないポートフォリオの大量発生原因
こういったコレじゃないポートフォリオが量産される理由は単純。ポートフォリオを真面目に管理する動機がないからです。メルマガ登録特典eブックにも書きましたが、ダメなアドバイザーはおしなべて契約をとることだけに熱心です。
それは運用口座開設にあたって販売手数料が入るからです。アドバイザリーフィーは運用額に比例し、また契約後数年はアドバイザリーフィーをチャージできる対象にならないことから、”アドバイザリーフィーを将来順調に稼ぐためにも、ポートフォリオ管理をしっかりしよう”というモチベーションを持ちにくい。
“数十年後のあなたの老後を確かなものにします”といったそのアドバイザーは、たかだか数ヶ月先の販売手数料にしか関心がないのです。そして概してそういうアドバイザーのほうが販売に熱心で資産運用のキモであるポートフォリオ管理のための知識研鑽のための努力を全くしませんから、コレじゃないポートフォリオが大量発生することになります。
では、なぜアドバイザーはこういうポートフォリオを組みたがるのか。一極集中型を組みがちなのは自信過剰なアドバイザー、仕事してない型は契約までの営業のみに特化している肉食アドバイザー、アンバランス型はがんばってみたけど途中で諦めた勉強不足アドバイザー。私たちはお客様から見せていただくポートフォリオレポートから、そのアドバイザーがどういう人格の持ち主かをある程度見抜けます。
概して言えることは、金融経済のあれこれも考えなきゃいけないポートフォリオを考えるなんてメンドクサイ…と思っているアドバイザーの多いこと多いこと。”すんごい儲かりますよ!(なぜかは聞かないでください)”と言って契約を取りまくるほうがコスパが高いのです。投資家から契約を取ればいわばアガリですから、投資家のオカネがその後どうなろうが知ったこっちゃないのです。
次回のブログでは、コレじゃないポートフォリオを組んでしまっている場合の対策について解説します。