GameStop、ビットコインに共通すること
年初に起こった、「GameStop株」の件をご存知だろうか。ゲームストップは、プレステやXboxなど家庭用据え置き型のゲーム機とソフトを販売する会社だ。オンラインではなく店舗をもって経営しており、6700近くの支店が全世界に展開されている。 かつて「ゲームを買う」というとゲームファンは街の家電量販店やこのGameStopのショップに行ったものだが、数年前からゲームファンが買い切り型のゲームではなくオンラインゲームに流入、そしてコロナでほとんどの人がオンラインで買い物を済ませるようになったというダブルパンチによってGameStop株もそれまでの高値から70%も下落、大規模なレイオフを余儀なくされている。 そんなGameStopだが「ヘッジファンドが空売りを仕掛けている」というニュースに反応した個人投資家たちがGameStop株が下落するほうに賭けているヘッジファンドとは逆に買い向かい、株価が急騰してヘッジファンドに大損をさせたという事件があった。 首謀者はアメリカの掲示板サイトRedditで投資家を募り、商いが薄いところに一気に買いをぶつけていったので市場が高騰した結果「強欲をむさぼるヘッジファンド」vs「それを正す個人投資家」という対立で個人投資家が勝利した。結果としてこのお祭り騒ぎの初期に参加した個人投資家は10-20倍の利益を得た。 個人投資家はさらに次の「GameStop株」を探そうと必死になっている。 |
ビットコイン
ビットコインはカナダでの仮想通貨ETFの上場や取引所Coinbaseの上場などでますます勢いづいている。それ自体価値をもたないところはビットコインと金は共通しているが、金が政治的な意図で埋蔵量や保有高が隠されたりするのに対してビットコインは誰が大きな保有者なのかはネットで公表されている(個人名ではなく、ウォレットのIDで)。 ビットコインの急上昇に対しては政府も警戒感を強めており、先進諸国でもインドや中国のように何らかの規制がかかることが予想されているのにも関わらず凄まじいばかりの上昇を続けている |
GameStopとビットコインに共通することは個人投資家の市場参入、そしてその根底にあるのは、「自分は出遅れているのではないか」という恐怖である。他人が儲けているなかで自分だけが得られたであろう利益を得られないのではないかという心理状態だ。 個人投資家がもつこの感情は大体裏目に出る。それは、株式市場が成長しないからではない。株式市場は今後もアップダウンを繰り返しながら成長していくだろうが、こういった「乗り遅れたかも」という感情を持っていること自体がリスクで、このテの投資家は少しでも市場が動揺したら「出遅れたせいでマーケットサイクルの後のほうに飛び乗ってしまった!」とキモを冷やし、市場から退場するからだ。 しかしまた同じことを繰り返す。「投資って難しいなぁ、増えないなぁ」という感情負債が蓄積していき、結果なんの投資もしなくなる… というオチである。 これを避けるためには最初の段階の「乗り遅れたかもしれない」と思ったことが原因である。乗り遅れてなんかいない。1年後には株式市場は暴落しているかもしれないが、10年後には2倍になっているのかもしれないからだ。1年でみるか、10年でみるかの違いであって肝心なのは安易に入場・退場を繰り返さずマーケットに居続けることだ。 特に現在のような高値圏では「乗り遅れた感」をもつ個人投資家が大挙している。同じタイミングで株式市場に入っていくとしても、少しの市場の動揺くらいで退場せず腹を据えて取り組んでいただきたい。むしろ落ちたら買い増すという気持ちでいてもらいたいものだ。 |
ポートフォリオ
いつまでこの上昇が続くのか。それは誰も分からない。明日暴落が始まるかもしれないし、1年後かもしれない。しかしたいてい不穏な空気が流れる始めるのは投資家が浮かれているときである。労せずして自分の資産が何倍にもなっていくのに笑いが止まらないときである。アルケゴスのような、洗練された投資家ですらレバレッジ取引を繰り返して破綻するに至っている。無謀な個人投資家が無謀な取引をしているであろうことは想像に難くない。 |