4月4.2%。アメリカの年インフレ指数(CPI)は2008年9月以来最大の上昇を記録した。3月は2.6%だったこの数字が、4月にきて一気に上昇したことになる。中央銀行が脇目も振らずに行ってきた金融緩和が一気にインフレとなって噴出したかたちとなる。 インフレを嫌気した株式市場は軒並み暴落、特に中国など新興諸国が売られる展開となった。台湾は瞬間的に9%近い下落となり、台湾史上最大の下落幅となっている。米連銀は「インフレ率が2%を超えても、すぐさま緊縮することはない」としながらもガソリン価格を筆頭に、ほとんどの項目で大きく物価が上昇している。中古車にいたっては、この1年間で10%も値上がりしたという。 インフレを嫌気するということはどういうことか。株式市場はインフレヘッジになるのではなかったか。すなわちインフレになれば株式市場も同じく上昇し、インフレぶんを相殺するのではなかったか。 しかし現在、株式市場をドライブしているのは低金利とそれによるカネ余りである。インフレを起こしながら人々の消費意欲を増進させようと、すなわち経済をまわそうと中央銀行は必死になっているわけだが、結果的にインフレだけが起こっている。この期間、収入も上昇したなら高いインフレぶんを吸収して同じ生活水準でいられるが、実態はむしろ逆で給料水準はむしろ下落している。 [Salary Increase Budgets Decline for First Time in 12 Years] 富の格差がコロナによってさらに拡大したということがメディアを通じて喧伝されているが、持てるものと持たざるものとのその差異は有価証券を保有していたかどうかということになる。労働力はコロナ下の需給関係ではより安く、そして有価証券は同じく需給関係でより高くなったという構図がある(仮に金利が1%として、株価が3%でも上昇してくれれば、2%の差益がとれる… ということをみんなが思って需給関係が逼迫し価格が上昇する)。 また昨今の仮想通貨の過熱ぶりをみても、いかに早く「持たざるもの」から脱却するかの競争が具現化されているように思う。このメルマガの購読者は弊社のクライアントも含めて少なくとも「持てるもの」であるのではないだろうか。 しかし、この「持てるもの」が恐怖していたのが過度のインフレだ。連銀が見たかったインフレが達成できた以上、低金利政策を継続する理由はない。むしろあまりに長期に渡る低金利政策によるインフレは市民生活をどん底に突き落とすだけだ。連銀は2023年まで低金利政策を続ける、としているが今回のインフレ発表でそれが2022年暮れに早まるのではないか、という観測がでている。 [Investors back off view that Fed could raise rates in late 2022 | Reuters] 強いインフレが観測されたということは、利上げ期待が高まりすなわちエキセントリックな資産 – 新興国株式や仮想通貨 – が下落しやすい素地ができる。もし弊社以外の預かりでそういった資産を保有してらっしゃる方はリバランスを検討したほうがよいだろう。 |
ポートフォリオ
一括投資であれば、ボラティリティの高い新興諸国や仮想通貨関連からいったん逃避するのも一つの策であると思う。これから低成長高インフレが来ると考えると、投機的な対象が爆発的な成長をするということは考えにくい。 弊社のクライアントからもよく「仮想通貨を買うべきでしょうか」というご質問をいただくが、現在に限っていえば答えはNoだ。新興諸国株にしろ仮想通貨にしろ、ニュースで大げさに報道されてから買うには遅すぎるのだ。誰もが話さなくなったその時にこそ投資妙味がある。 積立投資については、違った解釈が必要になる。新興諸国については、しばらくは面白くない展開が続くことは間違いない。だからといってすべてを現金化してしまうにはもったいない。今回のインフレショックはたしかに売り圧力ではあったが、かといってリーマンショックのときのようなものでもない。信用が巻き戻されるデレバレッジではないからだ。 そういう意味では、今回の市況は市場の「しゃっくり」程度であり大きくポートフォリオを変更するきっかけにはならないだろう。 |