先日、ポートフォリオの変更を終えた。昨年2018年秋から1年もたたずに変更しているので、頻度としてはやや多いかと感じられる向きもあろうが積極運用しようとした香港株式やイギリス株式に利が乗ってきたこと、またG20を終えての景況感として弊社の基本的な理解である「これ以上経済が勢いよく上昇することはなく、良くて微増」というスタンスには変化がなかったことが原因だ。ファンドの変更は面倒な手続きではあるが、何卒ご理解を賜りたい。 ※弊社会員様に対しては順次新ポートフォリオのご案内を差し上げております。 大きな流れをどこで掴むか、については資産運用業界にいない方にとってはなにか特別な能力が必要なように思われるかもしれないが、毎日マーケット情報に接しているとマーケットが人間に見えてくる瞬間がある。 日本はキックスケーターに乗っている老人のよう(衝突すると大怪我する)だし、バブル崩壊後の日本は大量輸血の必要なデブ(失礼!)のようなイメージだったし、アメリカのITバブル崩壊やLTCMによる金融収縮では手の骨折(足は丈夫なため歩ける)感で、そして今の中国は30歳前後で組織を任されたヤクザのトップのようでもある。その心は、20代前半のように無鉄砲でもなく分別はある。しかし胸のうちは青い野望に燃えたぎり、いずれ先代からの敵(アメリカ)を押さえて天下を取ってやろうと息巻いている… 私どもの頭の中ではマーケットが擬人化され、それぞれが会話し喧嘩し前に進んでいくようなイメージがあるのだ。だから興味のない方にとっては数字の羅列にしか見えないマーケット情報が色鮮やかに頭に浮かび上がるのだ。 ところで、今のアメリカはどうか。人間でいうと壮年期にあたり、日本よりは若いが中国よりは年を取っている。昔から鍛えているので筋骨隆々。ここ20年くらいは全世界の隣人に優しかったのが、このところ老後に不安をいだいておりチクチクと小言を言うようになってきた。小言でとどまっているうちはいいのだけれど、あの拳でなぐられるのはかなわない。日本はアメリカに殴られたらひとたまりもないから、恭順の意は常にわかりやすい形で示さねばならないし。後釜を狙う中国は武器(IT)を集め始めており、どうも気に食わない… といったところか。 |
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アメリカの不景気入りの可能性 ニューヨーク連銀が定期的に報告している「不景気インジケータ」という指標がある。様々な指標を総合し、今後12ヶ月以内にリセッション(二四半期続けて前年度の経済成長率を下回ること)入りする可能性があるかという指標だ。このグラフはネットで公開されているので誰でも見ることができる。ただ、誰もが活用できるというわけではない。 このグラフによると来年7月に景気後退する可能性は30%程度ということになる。数字だけ聞くとそこまで高い可能性ではなさそうだが、グラフをよくよくみると景気後退(灰色の部分)する直前に大きく可能性が跳ね上がっている。たとえば1990年の景気後退、2002年の景気後退局面では景気後退が始まる直前までインジケータの値は低かった。 すなわち、このインジケータが急激に上振れすると突然景気後退がやってくる可能性を示唆している。そして今まさに、突如として上振れしているのだ。私どもが景気後退を恐れてポートフォリオを変更するのはこのグラフによるところが大きい。 |
「アブラハム・ポートフォリオ」は本当にダメなのか お問い合わせの半分以上を占めるのが「アブラハム(※)から移管したいのですが?」だ。ファイナンシャル・アドバイザーを選ぶことは、雇用に等しい。投資家たるあなたが社長で、私どもやアブラハムが従業員である。従業員は給料(=管理手数料)をもらい、時間と能力を投資家に差し出す。 パフォーマンスの悪い従業員のクビを切るのは社長なら当然の責務だろうが、そもそもクビを切ることができることを知らず、クビを切ってもその後誰を雇用していいか分からないため右往左往してしまうことがある。 (※)アブラハムは現在ヘッジファンドダイレクト株式会社に名称変更済みだが、敢えて皆様に馴染みのあるアブラハムを使用 従業員としてのアブラハムの問題は1つしかない。それは ホウレンソウ(報告、連絡、相談)がない ことだ。アブラハムのポートフォリオは判を押したように、 HIL MAN AHL Diversified HIL JPMorgan ASEAN HIL BlackRock World Mining HIL First State China Growth の4つで構成される。私どものポートフォリオとは随分違うが、そもそもポートフォリオ構成に正解はない。私どもはヘッジファンドのAHLに対しては懐疑的であるし、ゴールドを入れるのは日本円を保有するのと同義だから入れないと何度も言っている。残るはASEANとFirst Stateだが、どちらもアジア株式、中国株式なのでボラティリティが高い。ただポートフォリオに正解はないのでどちらが正しいかは神のみぞ知る。 弊社へのお問い合わせでは「ポートフォリオに何年も変更がない」という不満がが多いが、ポートフォリオを運営するのが面倒になっているのか、逆に強いこだわりや相場観を持ってこのポートフォリオを貫き通しているのか私どもには分からない。 しかしどちらの場合にしても現在の市況について、運用スタンスについて社長である投資家に報告連絡しなければいけないし、社長に悩みがあれば相談に乗らなければいけない。仮にポートフォリオが長い目でみて「正解」だったとしても、それに至るまでに不安にさせるようであれば社員としては失格だろう。 とはいえ「どういった相場観、姿勢が詰まっているのか」は、私どもはポートフォリオを1分見ただけで分かる。アブラハムのポートフォリオは過去の指標だけを参照し、人手が足りないからポートフォリオの変更を怠っているというふうにしか見えない。「変更するのは面倒だし、ポートフォリオについて相場観があるわけでもなく過去の指標を見て適当に選択しただけだからホッタラカシにしておいて奇跡的に好転するのを待とう」という姿勢だろう。 ※本記事は、毎月発行の弊社メルマガに掲載しているものです。メルマガにご登録頂くと最新のマーケット情報を毎月お届けします。 |