シリコンバレー銀行(以下SVB)の急転直下の破綻そして救済はスタートアップ界隈のみならず世界中に波紋を広げている。 破綻の要因については、様々なレポートが出ているがこちらの記事が視点が偏らずうまくまとまっているので参照していただきたい。 シリコンバレーバンクの破綻は米銀全体が抱える脆弱性を浮き彫りに | 2023年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI) SVBの破綻はコロナ補助金、利上げ、SNSなど様々なテーマが垣間見えて面白いのだが私どもは個別の事象を深堀りするのではなく、マクロでこの影響がどこまで伝播するか考えてみたい。 短期的には薄い アメリカ政府がSVBを救済したので、一時的には影響は限定されそうだ。SVBの営業支店ではにこやかに出てくる顧客や、「何かお困りごとありませんか」と聞いて回る行員が放送されたりして、取り付け騒ぎは収まったんだな、という印象だ。「SVB取り付け騒ぎだ!」とSNSで拡散されていたこともあって、今回の政府や銀行の対処は素晴らしいものであった。 したがって短期的には金融不安が他の銀行や市場全体に伝播することはなさそうだ。数週間もすれば「そういうこともあったな」という程度になるだろう。 では長期ではどうか。まず利上げによってこれまでの過剰流動性に急ブレーキがかかっている。これまで多少リスキーな投資でも高い利回りをもとめてマネーが動いていた。仮想通貨の暴騰に代表されるように、流動性が過剰なうちは資金の出し手は冷静さを失う。短期で資金が増えるという誘惑に取り憑かれると「もっと上昇する」という自己暗示にかかるようになる。人間は相場から何も学ばないのだ。 しかし金利が通常に戻る過程で「もっと上昇する」という妄想が剥がれ落ちる。株式、債券が下がっていくなかで想定していた事態が起こらないことに気づく。冷静になると、急に自分のやってきたことがすべて間違いだったかのように振る舞い、米ドル預金などに資金を全振りする。 これがいわゆる「普通の投資家」像だ。 ここから考えられるのは、株式市場などリスク資産に資金が向かうことはしばらくの間はあつものに懲りてなますを吹く状態が続くのではないか。すなわち株式市場は今後数ヶ月は低調な状態が続くものと思われる。 また預金残高国内16位のSVBが残した課題は大きい。SVBのような課題に直面している銀行はたくさんある。ドットフランク法によって小さな銀行はストレステストを受けずに済んでいる状態だが、今後はそれを見直すのか。であるなら今後銀行の統廃合が進むことが考えられる。たとえば日本人に人気のハワイだが、SVBよりやや規模の大きいハワイ銀行も今回と同じようなことにならないとは限らない。アメリカに多額の預金を持つ方は、ストレステストを受けている大手、たとえばバンク・オブ・アメリカやシティバンクのほうが安心だ。 そして銀行はペイオフ制度により預金額保護の上限が決まっているが、証券会社でMMFを買っておけば間接的に米国債に投資ができ、かつ証券会社が倒産したとしても保護される。 また金融セクターの問題ではないが、アメリカの預金は恐ろしい勢いで尽きつつある。SVBも高止まりするインフレのせいで預金者の引き出しが急激に増えたことが破綻の要因となっている。 給与上昇率がインフレに追いつかない限り、この預金減少は止まらない。パンデミックで政府から得た補助金を使い果たした上、インフレでパンデミック以前の預金すら使い果たしてしまうとしたら… 今年1年は暗いニュースが続きそうだ。 年末になると「あの事件が景気の下り坂の最初だったな」というような事件になるのではないか。 |
【ポートフォリオ】 |
ニュースが悲観的なことを伝えているときは買い一択。とはいえ、今後数年以内に解約してしまい現金化する場合はポートフォリオをやや保守的にする必要がある。個別に相談していただきたい。 |