大統領選挙の展開。2016年の大統領選と同じで、メディアが考えるほど民主党のリードは大きくなかった。選挙結果は重大な不正が発見されない限り、という但し書きがつくもののバイデンが時期大統領となるのが確実な情勢だ。前回のメルマガでは 追加の緩和措置ワクチン開発米中の駆け引き がポイントになるだろうと書いた。幸い、ワクチンの開発については大幅な進展があったようだ。金融市場も上昇を続けていて、レポートをご覧になるクライアントにとっては嬉しい限りだがポートフォリオを管理させていただく立場としてはあまり現在のような割高水準が続くと株価の揺り戻しの大きさを意識しなければならなくなってくる。 特にこれから株価をさらにブーストさせると思われる追加緩和については米上院が共和党過半数をとれば「ねじれ」の構造を生むことになるから、アメリカ政府の債務上限撤廃と同じく追加緩和措置もモメにモメる展開は十分考えられる。またそもそもトランプが敗北を認めない、という個人の主観で選挙結果を否定するという法の支配に慣れきっている私たちからすると考えられないようなことがどれくらいインパクトを持ってくるのかは予測不能だ。 株価は高めに推移するが、「いい加減に大統領決まってくれ」あるいは「もっと追加措置を発動せよ」といった市場の期待が株価を押し下げる要因となるいわゆる「催促相場」になる展開を予想している。 米中の駆け引きについては、バイデン新大統領は親中派だと言われているがそれはあまりに短絡的すぎる。そもそも米中国交回復の糸口となったのは共和党のニクソン大統領だし、ブッシュ大統領(子)も親中であった。オバマ大統領が「アジア・リバランス」を政策の中心としていたことで親中イメージが強いのかもしれないが、実際にはその時代の国際情勢によって親中なのか反中なのか決まってくる。バイデンは香港問題、チベット問題については積極的に中国の政策に反対する旨の発言をしている。 現在米国が中国を脅威に感じていることは間違いなく、これは民主党・共和党の違いを問わない。特にハイテク産業については もはや排除に動き出そうとしているくらい嫌中感は高まっている。この文脈の中でバイデン新大統領がいきなり中国に歩み寄るのは考えにくい。 |
ポートフォリオ |
株価は相変わらず割高である。今まで株式市場をブーストしてきた2つの要因すなわち連銀の低金利政策国からのコロナ支援補助金だが前者についてはすでにゼロ金利となっているのでこれ以上のマイナス金利を期待することはできず、コロナ支援のための補助金については前述したように規模や期間においてどれくらいのものを期待することができるかは分からない。ただ仮に催促相場が訪れたとしても企業決算は比較的よく、トップ企業はコロナ禍などどこ吹く風のようだ。もちろん中小企業は苦しいが、中小企業は上場もしてないしS&P500構成銘柄でもない。飲食店や旅行業はバタバタ倒産していき、世相も暗くなっているものの大企業は安泰という皮肉な構図だ。 個人的な話にはなるが、私が日本で証券業界に入った2000年は資産運用とは富裕な個人の暇つぶしといった趣があった。格差はそこまで固定されておらず、現在のように金融商品の選択の幅もなく僕が営業にいくと玄関の軒先でお茶をいただきながら仕事の一線からひいたご隠居と経済や産業についてとりとめもない話をし、商談をまとめるというのが日常的な風景だった。 しかし今は誰でもS&P500に気軽に投資ができる。しかもその必要に迫られている。日本ではそもそも経済自体が均衡縮小とでもいうような微増微減を繰り返し、給料が上がりづらく、一発逆転を狙って起業して失敗でもしようものならその先のセーフティネットがない。そういった心のスキをついて変なブローカーが暗躍する。弊社が5年前に創業したのはこのオフショア積立生保の業界のあり方がむちゃくちゃだったが、2016年2017年ごろに変なブローカーが一掃された。同時に契約を申し込んだクライアントだけが取り残される状態となり弊社のサービスをご利用いただいている。 経済が拡大し、給料が上昇し、格差が固定されず社会が流動的であればオフショア積立生保なんて申し込まなくても良かったし、それゆえ弊社のサービスも利用せずに済んだのだ。 そんなことを考えると、積立生保のクライアントのフォローも大事なのだがうっかり積立生保に入ってしまった方々にどうやって金融リテラシーをつけて頂くか、ということも課題ではある。 |