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複利に関するよくある勘違い
「海外の資産運用は複利で運用されるから凄いんだよ!」
「へ、へぇ〜、そうだよね複利だもんね」
実はよく分かっていないのにこんな会話をしていませんか?
よく勘違いされがちな事ですが、複利計算は計算方法の一種であって、運用方法をさすものではありません。たとえば、二点の異なる時期の時価総額をとらえて単利計算することも複利計算することも可能です。仮に1月1日に100万円だったものが10年後の1月1日に200万円になっていた場合、単利計算と複利計算の両方の計算方法があります。
複利の持つ効果をしっかり理解し、見方につけることが出来れば、長期投資の実践とともに大きな恩恵を受けることが出来ます。
アインシュタインも注目した複利の効果
“Compound interest is the eighth wonder of the world. He who understands it, earns it … he who doesn’t … pays it.” Albert Einstein
複利は世界の7不思議の次の不思議だ。理解している者はそれで稼ぐが、理解していない者は…そ れを支払う – アルベルト・アインシュタイン
天才物理学者で一般相対性理論という物理学界の金字塔を打ち立てたアインシュタインのこの言葉は有名ですね。経済を理解するためにはこの言葉だけでいいという人もいるくらいです。
単利は元本に対してのみ利息がつく計算方法
単利は、当初預け入れた元本に対してのみ利息がつく計算方法です。
複利は利息を原本に繰り入れ新しい元本として再投資する計算方法
複利は、単利とは異なり運用期間中に発生する利息を元本に繰り入れ、それを新しい元本とし再投資、利息を計算する方法です。発生した利息が元本に加えられ再投資されていくので利息が利息を生んでいく形になり投資運用を行う場合には、大変有利です。
複利は雪だるま式の借金でイメージする
複利の考え方は、負の方向(借金)からイメージすると 非常にわかりやすいです。自分の人生では、絶対に経験したくないことですが、
「雪だるま式に増えていく借金」といわれる考え方がそのものです。
例えば、金利の高いところから借金した場合には、 借りた金額が少額であっても、金利さえも支払えなくなることがあります。
指定の期日までに払えなかった場合には、借りた金額にさらに金利がかかることになります。
この、「金利分が元本に上乗せされて、さらに借金が増えていく」という悪循環が複利の効果です。ここで挙げた例は、負の方向(借金)から見たものですが、 これを正の方向(真っ当な資産運用)に置き換えれば、複利がプラスにも力が働くことが実感できると思います。
単利と複利を比較すると
分かりやすい例として、運用資金100万円を使って、年間の利回り10%を毎年実現すると仮定して計算してみましょう。
単利の方は元本100万円のみに対して10%が付きますから、毎年10万円ずつ増えていく計算になります。しかし、増えた10万円は運用しません。
一方、複利の方は1年目の運用は、単利と同じように100万円に対して10%、つまり10万円の利益が出ます。
ここまでは全く同じですが、2年目から徐々に差が出てきます。2年目は得られた運用益10万円を元本100万円に再投資をして110万円を運用にあてるのです。
110万円の10%は11万円になりますから、ここで単利の10万円と1万円の差ができます。たった1万円と思われるかもしれませんが、これを毎年続けて行った場合どうなるでしょうか?
運用年数20年目を見てください。単利での運用は300万円になっていますが、複利ではなんと673万円にもなります。ざっと、2倍以上の差が開いてしまうのです・・・。
毎月5万円の積み立てを30年続けて1億になるという話の真相
ロイヤルロンドン360、ハンサード、インベスターズトラスト、フレンズプロビデント、こういった会社が提供しているオフショア商品を紹介され、
「複利の効果で毎月たった5万円の積み立てで30年後に1億円も夢じゃない!」
という話を聞いて騙されてしまう方が大変多いと聞きます。確かに夢ではありませんが、これが実現することはほぼ100%無いと言い切っていいと思います。なぜでしょうか?実はこの言い回しには巧妙な罠があります。確かに一定の条件の元でこれを実現することは可能です。その条件とは、
①30年間、毎月1度も休みなく、外貨建てで50,000円相当の支払いを続けること
②毎年必ず10%以上のリターンを出し続けること
この2つです。なんだそんな事か、セミナーでちゃんと話をしていたよ、というかもしれません。でも本当に①が出来ますか?30年の間にあなたにどんなライフイベントが待ち構えているでしょうか?子供の養育費等はある程度想定が出来るかもしれませんが、急な病気、事故などお金が必要になるタイミングは30年のうちで1回や2回でしょうか?あなたには孫が出来て色々プレゼントしたいと思うかもしれないし、もっと良い投資商品が現れてそれに変更したいと思うかもしれないし、日本の税金が上がって月50,000円すら苦しくなるかもしれません。30年間のうちに起こるライフイベントを全て予測することは通常不可能です。
恐らくその30年の間に、あなたは何度となく、恐らく100回以上、一旦この積み立てを停止したいな、もしくは金額を減らしたいな、更には解約したらいくらになるんだろう、と思うでしょう。30年間何かを続けるというのは相当な覚悟が必要です。30年同じことを続ければだいたいどんな事でも一流になれるでしょう。それこそサッカーのメッシみたいに才能が必要なサッカー選手になるのは無理かもしれませんが、ある分野では誰にも負けない第1人者くらいにはなれると思います。それくらい30年というのは長い時間です。それをたった1回のセミナーと香港HSBC口座開設ツアーに参加しただけで決めていいのでしょうか?
そして、仮に①が出来たとします。あなたが毎朝のリズムを整えるために朝食は10年以上必ずカレーを食べ続けるイチローのように鉄の意志を持った人間だったとします。でも問題なのは②です。本質は①と一緒なのですが、30年間というとてつもない長い期間、毎年10%以上のリターンが本当に可能だと思いますか?
あなたはセミナーで、こんな表を見せられませんでしたか?
どこかのアドバイザーライセンスを持っていないIFAもどきが作った表のようです。
A.毎年10%のリターンを出し30年間複利で運用する
B.年利平均10%のファンドに投資し30年間複利で運用する
この2つが全く意味が違うというのはお分かりでしょうか?IFAもどきは、事実がBであるのに、それがAであるかのように説明し、顧客を勘違いさせます。年利平均10%を出しているファンドに投資するという事は、30年というスパンで見れば、当然10%を切る、更にはマイナスリターンになる年もあるでしょう。そして、毎年コンスタントに10%以上という前提が一度でも崩れればこの1億円計画は破綻するのです。
※別の記事でそれがどういう意味か、データを使って検証する予定です。
あなたがIFAもどきを通して投資するファンドは、世界恐慌が起こっても10%以上のリターンを保証してくれますか?今後30年間に中国経済発の世界同時株安が起こりました。次はインドでしょうか、南アフリカでしょうか?ブラジルでしょうか?その全ての出来事を乗り越えて10%以上を達成するのでしょうか?アドバイザーから見れば、達成できない言い訳がたくさんですね。彼らにはいつでも逃げ道があります。
つまり、あなたが聞いたセミナーの前提には無茶が多すぎるのに、複利で毎年10%の威力が強調されて過ぎていて、その裏にある上記のような事実が軽く流されているのです。恐らく、「投資にはリスクがつきものです」この簡単な言葉で済まされていると思います。誰もが聞いた瞬間に納得しますね。そこが怖いのです。あまりにも当たり前過ぎるこの言葉、自分に置き換えて考える事がみんな出来ていないのです。もしそうじゃなければ、上記の①と②が実現できるだろうなんて1ミリたりとも思えないと思います。
複利の力を過信しない
繰り返しになりますが、複利の計算はあくまでシミュレーションであって、毎年10%の利益を安定して出していくのは現実的にはほぼ不可能に近いです。正に今のように中国経済の落ち込みによって世界全体が風邪を引いているような状況では、年間の利益率がマイナスになることもあるでしょう。再度書きますが、
①30年間、毎月1度も休みなく、外貨建てで50,000円相当の支払いを続けること
→あなたがイチロー並みの鉄の意思があれば可能。つまり自分次第だがほぼ不可能
②毎年必ず10%以上のリターンを出し続けること
→あなたがどんなに頑張ってもコントロール不能な市場の話。そして現実的にほぼ不可能
投資には必ず波があります。そこで長期投資が活きてきます。好調の時も不調の時も動揺せず、一定額を投資し続ける事によって、資産運用のゴール地点での利益を10%程度の時点に着地させる事は可能です。
運用で得た利益は再投資することにより、さらに利益を拡大するチャンスが生まれますが、大切なことは、「一時的な利益や損失に一喜一憂するのではなく、長期投資を実践して確実に複利の効果を享受すること」です。
将来を考えて資産運用を考えるのは素晴らしいことですし、日本の将来、自分の将来を考えれば必要なことです。しかし、それを「毎月5万円の積み立てを30年続けて複利運用で1億」という話で決めるのではなく、しっかりとアドバイザーと個別ライフプランを相談した上で決めましょう。