・この株価のラリーは異常 ・運用アドバイスに盲目的に従うべきでない 先月、このようなことを書いた。これはあふれるニュースを分析する上でも役に立つので覚えておいて損はない。 |
株式相場の調整局面においては、大きくわけて3つのタイプがある。 1つは景気回復型、2つめはイベント型、そして最後は信用収縮型だ。たとえば一昨年の12月、連銀が今後利上げを行うとして株式市場は10%以上落ち込んだ。これが1つ目の景気回復型だ。景気が回復する局面で金融政策を緩和から収縮にシフトする際に起こる。足元の経済は好調なので調整されたとしてもそこからまた上昇に転じる。2つ目のイベント型が今回のようなコロナウイルスや911同時テロのようなものだ。こちらも足元経済が好調である限りは調整局面は短命におわる。 そして最後がリーマンショックや1987-88年の日本のバブル崩壊である。リーマン・ブラザーズや山一證券などの金融機関が破綻することで信用収縮が起こる。これがもっとも深刻であるだけにもっとも尾を引く。 |
巷のニュースでは現在「リーマン・ショックを上回る」とか「戦後最悪の」など様々な枕詞をつけて現在の状況を伝えようとしている。ニュースは耳目をひいて視聴率を上げ、最終的にはスポンサーとなるCMに多額の広告費を使ってもらうビジネスだから誇張はあって当然だ。 しかし株式市場で現実に起こっていることは3月の安値から20%以上も値をあげているということだ。もし現実が戦後最悪なら戦後最悪に株式市場も下げてなければおかしいが、現実は異なる。 これはなぜか。上記が説明となる。現在、まだ信用収縮が起こってないからだ。株式市場を一つの圧力釜とすると、窯の中から投資家の不安や恐怖が溢れ出そうになるのを中央銀行が必死に抑え込んでいる。信用収縮が起こるのはつまるところ市場参加者の心中が不安と恐怖で満たされ、「他人も市場も信用できない」という状態になることだ。 今のところ釜の蓋が開くのがまだ抑えられている、という段階だ。コロナ報道が主役だったのであまり報道されていないが連銀はETFはもちろん格付けの低い債券まで買うと言っている。しかもリーマン・ショック以降5年間にわたって拠出した資金と同額をたかだが2週間たらずで拠出したのだ。 日本だけでなくアメリカも、これだけ株式市場が中央銀行に買い支えられたことはかつて一度もない。株式市場と実体経済が乖離して久しいが、もはや乖離ではなく別物になっている。株式市場は実体経済の先行指標ではなくなっており、中央銀行のリスク資産買い入れパワーが市場を左右している。 一つ危惧しているのは、こういった政策がドル安を招きアメリカに悪性のインフレがを引き起こすのではないかということだ。支出が増え、需要が高まるなかでインフレではなく単に中央銀行への信頼が失われドル安で起こるインフレ。そうなるとアメリカも日本と同じように失われたン十年を歩むことにもなりかねない。 短期的にも物流価格の上昇や人件費の高騰などで需要がないところでインフレが発生する可能性がある。お手元の現金は可能な限り置いておかれるとよい。 |
ポートフォリオ
ポートフォリオ 株高が一服して上値が重い。中央銀行の緩和バズーカの威力はここくらいまでで、あとは経済が先に回復するかバズーカの威力が持ちこたえられるかのせめぎあいとなろう。 私どもの見立てだと1年以内に二番底が来るシナリオが60%、このままふらふらしながら維持あるいは上昇していく可能性が40%だとみている。リーマン・ショックの際もリーマン・ブラザーズが倒産してから一時的に株価は持ち直し、そこから大きな底が来た。それまでおよそ半年かかっている。同じ相似形を描くことはないだろうが、それから考えるとこの秋にも二番底が来る事になる。もちろん市場は刻一刻と変化しているのでこの秋のことはわからないし、明日のことですら見通すことなどできない。 私どもができるのはマーケットを常にモニターし適切なタイミングで最善のアドバイスを提供することだけだ。 とはいえいまのところラリーが続いているので、しばらくは静観していて構わないと考える。 ※ ポートフォリオ変更の内容、変更の有無については、次回のサービス内容改定時からはご契約中のお客様のみにお知らせいたします。 |