アメリカの住宅価格が3月、13%も上昇したことが界隈を賑わせている。 Home prices in March saw highest growth in over 15 years: S&P Case-Shiller 住宅も食べ物も住宅価格が13%上昇するのは、小麦粉の価格が13%上昇することとは違う。給与が上昇しないなかで住宅価格が13%も上昇するということは、住宅サイズを小さくして安い家を購入するか、無理して購入して毎月のローンの支払に怯えながら生活レベルを下げるほかない。そして生活レベルが下がるのであればそれは消費の停滞にもつながりかねないため、市場では「金融引き締めか」となった。現在、アメリカ中央銀行はゼロ金利プラス量的緩和を継続中である。 早期引き締めか、否か。 これについては私どもは早期引き締めはやはり当初の予定通り2023年までは現実化しないと踏んでいる。比較的高いインフレ、急激に回復する雇用、そして安定的な民主党政治。コロナがワクチンによって収束するとすれば、利上げに必要な要素は揃いつつある。そしてまた、金融の正常化を願う政治家によっても利上げし資本コストを上げることで拡大する貧富の差を少しでも食い止めようとする動きがある。 インフレ・ターゲットとして2%前後という言い方をしていた米連銀が2%を超えた現在も引き締めをやめないのは、早期引き締めが回復中の景気腰折れを防ぐためでもあるがこれだけ世界中が「緩和」というぬるま湯につかった後で引き締めという冷水をかけた後のことが予想できないからでもある。 当分の間、このぬるま湯状況は続くだろう。「金融資産は高くなりすぎた、今は踊り場でいずれ下落するだろう」という言説があふれてきているが私たちはそうは思わない。景気が過熱したといえるような段階ではない以上、金融緩和はまだまだ続く。 |
ポートフォリオ
「ポートフォリオをリスク全開(リスクオン)にするとき、どういった指標を参考にしていますか」とお客様に時々聞かれるときがある。特に下落局面における思い切った判断はお客様にとっては「リスクを取るのは早すぎる」と思われることもあるらしい。逆にリスクを取らない状態にするときは「遅すぎる(すなわちもっと早くにリスクを減らすべきだ)」と思われるらしい。 ポートフォリオのリスクオン・オフの切り替えについては決まった指標を参考にしているわけではない。ただ、現代の資本市場の基礎理解とともにほんの少し先の未来を見ている。たとえば現在であればコロナで傷ついた経済がようやく立ち直るきっかけをつかんだくらいなのでインフレの数字だけみても中央銀行が早急に利上げをするとは到底思われない。 また世界経済はコロナ前からカネ余りである。実体経済と市場経済があまりに大きく乖離しているため、もはや個別の企業業績が良いか悪いかはさして問題ではなくなり、もはや実態と乖離した市場のセンチメント、市場参加者の総意が金融市場を支配するようになって久しい。でないと、失業者があふれかえった1年前に株式市場の伸び率が戦後最大になったりはしない。各国が政策金利を一気に引き下げた上に量的緩和をしたからこそ株式市場に一気に資金が流れ込んだのだ。 信用が大きく伸び切っているところに、センチメントが悪くなるタイミングで株式市場は崩れる。信用とは借金のことだ。借金が膨れていれば、わずかなニュースでも市場はネガティブな方向へと働きやすい。今は市場は楽観的だ。今後、GDPの急激な上昇や失業率の改善が伝えられるだろう。これだけ信用が膨らんでいても、政府がどうにかしてくれるのではないかという安心感がある。こういった市場の機微をみながらポートフォリオのリスクを考えているので「AとBが揃えばオン、でなければオフ」といった伝え方ができない。 そしてそのスイッチの切り替えが遅すぎるのか早すぎるのかは、弊社のクライアントであればよくご存知だろう。 |