ロシアのウクライナ侵攻については全くもって非人道的で、プーチンの行いには一分の同情もない。またそのせいで原油価格、農産品価格、資源価格が急上昇し世界経済を大混乱に陥れている。弊社のお客様のお問い合わせも多くが「ウクライナ情勢で資産運用はどうなるんでしょうか」というものだ。毎日テレビやネットで悲惨な情報に触れていたらご自身の資産運用のあり方を見直さなければいけないと思うのは当然である。事実、株価はS&Pで10%、ナスダックは20%下落した。 ただ前回のニュースレターでも申し上げたとおりロシアが仕掛けた戦争でリーマン・ショックのような金融危機を引き起こすことはあり得ない。戦争は国が借金漬けになることを意味するが、民間巨大金融機関がデフォルトすることとはわけが違う。リーマン・ショックはまさに民間巨大金融が破裂し世界中に伝播していったのとは違ってロシアがデフォルトしても、ロシアにカネを貸している銀行のバランスシートがほんの少し傷がつく程度だ なのでロシアが今後国際世論からどのような批判をうけ制裁をうけたとしてもそのことで株価が50%下がる、みたいなことは起こり得ない。自分で書いてても嫌になるが、あれだけ人命が失われても株価にそこまで大きなインパクトはないのだ。 足元、年初来ロシア侵攻で落ち込んだ株価は落ち込んだ分の半分くらいは取り戻している。「プーチンは極端なことはしない、自国経済を破滅に追い込むからだ」という大方の予想を裏切って侵攻が開始されたので株式市場はびっくりしたが、日々繰り返されるひどいニュースにも慣れてきてしまい、「そういえば株式市場はまだまだ利上げがインフレに追いついてないから買いだな」と思い出したかのようだ。 この状態がなんとなく気持ち悪い。目下、アメリカには凄まじいインフレが吹き荒れヨーロッパでもリセッションになるであろうことが予想されている。こんな状態でも株式市場が落ち着いているというのは投資家に一つの仮定があるからだと思う。 |
「連銀はソフトランディングに導いてくれるだろう、という無茶な期待
それは、「連銀はソフトランディングさせてくれる」という仮定だ。連銀はインフレを抑えて雇用を安定させる責務を負う。利上げスピードが早すぎても景気後退を招くし、利上げスピードが遅すぎれば高インフレで国民は疲弊する。連銀はアメリカ経済ひいては世界経済をドルの貸し出しレートそして資産の買い入れ売出しというたった2つの武器を使ってコントロールしなければならない。そんな難しい作業がスーッとうまくいく、と株式市場が信じているのではないか? そんな気持ち悪さがある。 連銀が高いインフレを制御できたのは、80年代のインフレファイター、ポール・ボルカーの時だけだ。強い信念で、世論の利上げ反対をもろともせずにインフレが収まるまで政策金利を大幅に引き上げ続けた彼はヒーローだったが、このご時世にそこまで胆力のある金融政策を行えるか。また80年代と比較して複雑性が増している現代で、先を見通して金利を調整できるほどの慧眼と知慮を備えた政策当局者はいるか。それを考えると「連銀がよしなにやってくれるだろう」とのんきに考えるのは間違っている気がする。 だからといって急に全資産を売る、みたいな極端な行動はしなくてもよい。言いたかったのは、そこまで順調に株式市場が上昇基調に乗ると考えないほうがよい、ということだ。 |
ポートフォリオ
特段変更はない。上述したような連銀がソフトランディングに失敗しハードランディングする状況、たとえば企業収益を圧迫するような高インフレ、労働市場の悪化、それらがもたらす株安債券安がやってきてもリスクオフすることなく買い向かっていく。 |
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