先月からのマーケットはあまり大きな動きがなかった。インフレがピークアウトする気配を見せていること、また連銀が「中立金利は近い」と言っていることもあってインフレと戦うために極端な利上げはしないであろう期待感、安堵感が広がったためである。 半年も膠着状態が続いているロシア・ウクライナ戦争も出口が見えないままだ。しかしこれから不景気がやってくると想定してかオイルやガスの値段も全般的に安くなってきており、スリランカの暴動や中国の不動産不払いなど耳目を集めるトピックはあったもののマーケットが大きく反応するまでには至ってはいない。 (個人的には昨年にいわゆる総量規制が導入されてから中国恒大集団に代表されるようなデベロッパーそして中国の不動産市場全体の行く末には興味があるが) 様々な指標で不景気が訪れることは明白ではあるが、金融市場の底は本格的に不況が訪れるだいたい6-12ヶ月前を行っていることが通常だ。貯蓄率がアメリカだけでなく世界的に下がってきておりリーマンショック前の水準に近づいている。リーマンショック前と違うのは、「景気がいいので財布のひもが緩む」のではなく「コロナによって世相が不安定であるにも関わらず、物価が上昇しているせいで支出が増えている」からだといえる。 Americans’ Savings Rate Drops to Lowest Since 2008 as Inflation Bites – Bloomberg 今は各国の財政下支えでなんとかカバーできているが、コロナが終焉、あるいはWithコロナが受け入れられるようになれば国の財政出動は必要なくなるのでコロナ後の真の経済の力が見えてくると考えられる。 直近の高値を昨年末だとすると、株価が下落しはじめて8ヶ月経過する。連銀の利上げペースが今後市場が期待したよりも弱いとすれば、しばらくは株価が上昇していくだろう。同時に景気は後退すると予想している。アメリカはすでに2期連続でGDPが1年前のGDPを下回っているので、定義上の景気後退ではあるが実質的なもの、たとえばレイオフが激しく行われたり新規設備投資が凍りついたりするのはもうそろそろくるのではないかと思われる。 不景気は、有価証券での一括投資はもちろん事業、不動産など他の投資も含めて安く買えるバーゲンタイム。もしかしたらあなたの周りでもすでにそういったオファーが来ているかもしれない。逆に今手元にキャッシュがなくて苦しい思いをされている方は気持ちが楽になるからと安易に今手放すのではなく、ギリギリまで粘っていただきたい。有価証券は(不景気が続いたとしても)上昇していく素地は十分にある。 |
厚切りジェイソンのツイッター全削除の件
お笑い芸人の厚切りジェイソンはそのマルチな才能で会社経営や資産運用指南をしている。彼の運用スタイルは米国株を分散投資の対象とし、毎月余裕資金で運用していくという大変にシンプルなもの。経済評論家の山崎元もその著書で分散先以外は同様のことを言っており(彼は株、債券に分散でリバランス)、資産運用は結局こういうシンプルだが強力なやり方が一番よいのだと、100%同意する。 しかし厚切りジェイソンが米国株投資を勧めた直後に株価の下落が起こったこともあり厚切りジェイソンに対する恨み節というか八つ当たりのようなリプが大量に来たことから厚切りジェイソンは資産運用にまつわるツイートを全削除してしまったらしい。 実にもったいない。彼のようなアドバイスは値千金であるものの、シンプルすぎてすぐにはその真髄をつかめないこともあるのだな、と気の毒に思った。気の毒に思ったのは厚切りジェイソンのほうに、ではなくて彼のアドバイスを聞いて資産運用を始めたほうに、である。 一時的なダウンはあるにしろ、長期で積立をするのは「誰にでも勝てるゲーム」であることは統計が証明している。書籍を読み、ネットで裏付けを取りながら自分でもデータを引っ張ってきてあれやこれややってみればその正しさは分かるはずなのに、厚切りジェイソンを批判した人はそういった面倒くさいことをすっ飛ばして「有名人が言ってたから」という理由で運用に飛びつき、「言ってたことと違ったから」という理由で運用から離れていくのだろう。 米・証券大手のチャールズ・シュワブが面白いレポートを出している。簡単にいうと 1. 毎年、最高のタイミング(その年の最安値)でUSD2,000の積立投資できたAさん 2. 毎年、株価の高低に関わらず年初にUSD2,000を積立投資できたBさん 3. 1年を12回に分け、それぞれUSD166ドル(合計USD2,000)を積立投資できたCさん 4. 毎年、最悪のタイミング(その年の最高値)でUSD2,000を積立投資できたCさん 5. 投資をせず、現金を眠らせ続けたEさん この5人の中でEだけダントツに低いということを示したグラフがこちら。 厚切りジェイソンはツイッターで若い方に向けてABCDのどれかに収まるチャンスを与えたのにも関わらず、結局タダで情報を手に入れて、考えを深めなかった経験のない投資家はEのままで居続けるだろう。 では厚切りジェイソン、山崎元このシンプルな法則にしたがってさえいれば資産運用はうまくいくのであれば、アドバイザーは何のために存在するのか。経済談義ができるかどうかは運用に影響を及ぼさないとすれば、何のために存在するのか。おそらくそれは、この簡単な法則を徹底させるとともに、DよりはC、CよりはB、BよりはAを目指すために存在するのかもしれない。 このシンプルな投資法則を投資家に徹底させるために存在するのかもしれない。 |
ポートフォリオ
下がる時価総額、上がる積立額に焦る前に ここからもし大きく上昇するのであれば、リスクオンしていたポートフォリオのリスクを減らすことを考えている。もしここから大きく下落するのであれば、さらに売られている株式(アメリカのもの以外)をが中心となってくる。 |
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