目次
EU離脱によるイギリスへの影響
マイナス面
イギリスがEUを離脱した後、イギリス経済は極めて不安定になることが想定されます。例えば、
EU加盟国との自由な貿易が制限される
2015年、イギリスのEUへの輸出総額は1,300億ポンドで、これはイギリスのトータル輸出額の47%を占めていました。これらの輸出のうち何割かは、EUからの関税の影響を受け、制限される可能性があります。(イギリスとEUが新しい自由貿易協定を結んだ場合はその限りではありません)
欧州の金融センターとしての地位が揺らぐ
EUからの要求を満たす為、多くの銀行や金融サービス企業がイギリスから他のEU加盟国に移動を余儀なくされる可能性があります。その為、イギリスの金融サービス企業の優位性は極めて弱体化します。
EU離脱によりイギリスはマイナスの影響を受けますが、問題は実際”どのくらいの経済損失があるか”という”事です。
プラス面
EUを離脱した後、イギリスは対国内、対国外含め独立した自由な政策を取ることが可能になります。例えば、
自由な貿易
EU外の国との自由な貿易関係を築くことが可能となります。例えば、中国、EU未加盟のヨーロッパ諸国、ラテンアメリカなど
移民のコントロール
移民政策を自分たちで決め、EUからの移民の流入をコントロールする事が可能になります。しかし、この点においてはイギリスに対してどんなプラスの影響があるかはまだ分かりません、なぜなら、EUからの移民の制限は、イギリスの労働人口の減少に繋がり、当然それはイギリスの経済成長を鈍化させるからです。特に、移民は若い人が多いので労働力の減少は顕著です。
結論
イギリス経済はここ1〜2年で苦しむことは疑いようがありません。なぜなら、EU離脱に依るメリットが明確ではないからです。EU離脱による痛みは短期的かつ大きなものです。今後2〜3年ではイギリスのGDPは3−5%減少する可能性があります。
EU離脱によるEUへの影響
マイナス面
貿易額の減少
EUとイギリスの間の貿易は少なからず影響を受けます。2015年、ヨーロッパ諸国のイギリスへの輸出額は2,700億ユーロで、これは全体の15%に相当します。イギリスがEUを離脱すると、当然これらは影響を受けますが、それほど大きなものではないと考えます。なぜなら、ヨーロッパ諸国にとってイギリスのマーケット単体はそこまで重要なものではないからです。
EU離脱連鎖の可能性
投資家が他のEU加盟国の離脱を懸念し、更にはEU崩壊のシナリオを勝手に描いてしまうという危険性があります。現時点では、他の加盟国が離脱をするかどうかははっきりとした事は言えませんが、イギリスはそもそもEUに対してあまり良い思いが無い為、他が追随する可能性は高くはないかもしれません。また、好調なドイツなどを除いた多くのEU加盟国はEU離脱による影響に耐えうる体力と自信が無いと思います。
マーケットの乱高下
EUに対するもっとも重大な影響は、ヨーロッパに限らず世界経済の短期的な混乱であると言えます。特にFXマーケットへの影響は甚大です。イギリスがEUを離脱した後は市場が乱高下しています。結果として、投資家は株、新興国マーケット、社債などのリスク資産を避けるようになります。一方で、日本円、ゴールド、アメリカ国債、ドイツ国債などの安全資産は資金流入の恩恵を受ける事になります。
結論
イギリスのEU離脱はEUへマイナスの影響をもたらしますが、その影響力は危機と呼べるようなものではありません。イギリスの危機イコールEUの危機にはなり得ません。
EU離脱による世界経済への影響
マイナス面
世界経済への影響は長期的には少ないと考えています。なぜならイギリスはもはや経済大国ではないからです。そのGDPは世界全体の3%で、GDPランキングでは上位に位置する国ではありますが、アメリカ、中国、ドイツの影響力に比べると単体の影響力は大きくありません。更に、イギリスのEUの離脱は、アメリカ、中国、その他EU加盟国同士の通常の貿易や経済活動はほとんど影響がありません。
大きな影響があるとすれば、EUへの影響の項目で記載したような世界経済の短期的な乱高下です。特にFXマーケットへの影響は大きいでしょう。
結論
世界の金融マーケットはは短期的には激しく動きますが、世界経済への重大な影響はありません。
EU離脱によりマーケットはどう動くか
英国のEU離脱が決定的となってから数時間のうちに、世界の株価は2%〜7%下落しました。しかしながらこれらの減少はイギリスのEU離脱に依るマイナスの影響や投資家のリスク回避傾向を冷静に直接反映したものではなく、単なる超短期の混乱がもたらしたものです。
イギリスのEU離脱は世界経済に今後確かにマイナスの影響があります。しかしそれは投資家の一時的なリスク回避傾向を反映したもの、そして3ヶ月以内の短期的なものです。更に、これは世界経済の成長に深刻な影響をもたらすものではないと考えます。もちろんイギリスは別です。イギリスは今後1〜2年、苦しむことになるでしょう。
世界の株価は今後数週間で5〜10%減少するかもしれません。しかし、ヨーロッパ及び世界経済への中長期の影響で考えると、3〜6ヶ月くらいの間で5%以内の減少に収まるでしょう。イギリスとEUの間の貿易に影響はありますが、それはイギリスとEU外の国との貿易活性化である程度相殺されます。
FXマーケットは最も影響の大きい市場と言えます。ポンドとユーロは引き続き売りが続くでしょう。一方、日本円やゴールドは資金流入が続きます。ここ数週間で、投資家のリスク回避傾向により日本円は100円を割り、ゴールドの価格は1,400円以上になるかもしれません。しかし、中長期的に見るとこのような状況は長続きしません。
リーマン級のインパクトって本当?
安倍総理がサミットの時に発した「リーマン級の不況が来る」という言葉が今取り沙汰され、安倍総理は正しかったという風潮もあるようですが、果たしてこれがリーマン級の不況に繋がるのでしょうか?
短期的な混乱は当然起こり得るものですが、イギリスという国の経済規模を考えると世界経済への影響は軽微と言えます。もちろん日本経済にも影響はあるのですが、あまり大げさに捉え過ぎるのも考えものですね。マーケットの過剰反応に振り回されないようにしましょう。