ロシアのウクライナ侵攻が始まってから世界経済は大混乱に陥っている。3月15日時点ではロシアがウクライナに譲歩するかもしれないという報道がいくつかの欧米メディアからなされており、原油価格は1バレル100ドルを切って市場は一瞬の平穏が訪れたかのように見えている。 ロシアとウクライナの戦況について、あるいは各国の思惑については様々な報道がなされているのでここでは資産運用からみた「戦争」についてお話してみたい。 |
1. 遠くの戦争は買い
非常に不謹慎な話であることは重々承知しているのだが、戦争で金融市場が軒並み落ち込むと反射的に株式・債券を売り、コモディティ(ゴールドや資源)を買うということを考え、次の買い場に備えようとしてしまう。戦争によって投資家心理が冷え込むので今回のようにまず売りが先行する。そして有事のドル買いという言葉があるように、ドルが強くなることで表面上の資源価格は上昇する。もちろん今回のように、一大資源大国であるロシアが輸出を止めると需給関係は逼迫するのでそれでも上昇する。 しかし、2011年のアメリカ同時多発テロ事件の際もそうだったがショッキングな戦争、テロ行為によって株価が半値になることはない。なぜならそこに膨張した借金を巻き戻すという負の経済活動、デレバレッジの要素が少ないからだ。逆にリーマン・ショックで株価が半値になったのは、金融機関がとんでもない借金を抱えており、その風船が弾けたことでデレバレッジが世界中で起こったことに起因する 人名が何の理由もなく失われるという意味で戦争は悲惨で、許容できるものではない。しかしデレバレッジのインパクトでいうと、大きなものではない。 「遠くの戦争は買い」という相場格言があるが、これは遠く(国外)で戦争が起こっても投資家心理が冷え込むという点においては国内市場も下落するのだが、デレバレッジが広範に起こっているわけではないためいずれリバウンドする。これを見越した上で「買い」を入れる。しかし買いを入れる対象は戦争当事国ではなくて国内市場が対象だ。ロシア・ウクライナで戦争が起こっているので、ロシア・ウクライナの金融資産を購入するのではなくアメリカや日本(戦争当事国から遠い)の金融資産を買え、という意味である。 |
2. ロシアのデフォルトは次の金融危機を引き起こすか
とはいえ、ロシア国債がデフォルトの危機を迎えている。米ドル建てロシア国債ルーブルで利払いをするとロシア側は主張しているが、今ルーブルを受け取りたい投資家はいない。すでに格付け機関はデフォルト寸前という扱いをしているので、仮に利払いをルーブルで支払ったところでデフォルト認定は避けては通れない。明日の3月16日に利払いが迫っているが、今日明日で停戦、SWIFT復活、資産凍結解除が一気に行われる可能性はゼロだ。 となると、今後ロシアは国としてはもちろんロシア国内の企業も外国で資金を調達できないことになる。これは北朝鮮やシリアと同じ状況であり、しかも石油や天然ガスを売って調達して経済を回してきたのが一気にストップすることになる。 ロシア経済は世界で10番前後である。経済規模でいえば韓国、カナダ、ブラジルなどと並ぶ。これらの国がデフォルトしたとしたら… と考えるとインパクトは巨大だと考えてしまうのだがそもそもロシア国債の外国保有は670億ドル程度しかなく、そのうち外貨建ては200億ドルだ。自国通貨で発行するルーブル建て債券はデフォルトを(原理的には)起こさないから、ドル建てのおよそ2兆円がデフォルトする計算となる。だとしても、リーマン・ブラザーズ一社が64兆円の負債総額で破綻したことを考えるとあまり大きなインパクトではない。 すなわち2兆円すべてがデフォルトしたとしても、巨大な金融市場にはさざなみ程度にしか過ぎない。なのでロシアのデフォルトが金融市場に与える影響はそこまで大きくはない。 |
ポートフォリオ
今回の戦争で世界の安全保障レジームが根本的に変化した。これからインフレが起こり、日本政府は自らが何年かかっても達成できなかったインフレ2%を外圧によって、しかもコロナ禍という最悪のタイミングで達成できそうだ。欧州ではすでにインフレの中経済がシュリンクするというスタグフレーションが起こると予想されており、日本でもマイルドなスタグフレーションは起こるだろう。アメリカやヨーロッパのような7%という凄まじいインフレに見舞われていないだけでもラッキーというべきか。 コロナバブルがはじけることによって金融市場の値ごろ感は増している。積立投資は額面金額と投資リスクのギャップが悩ましいところだ。すなわち現在のような株価が下落している局面( = ポートフォリオ明細の資産額が下落している局面)でより大きなリスクを取ることが心情的に難しい。しかし、ここで買い向かっていかないと資産は増えない。なので先月行ったようなリスクオンのポートフォリオ変更が資産を増やす王道であるという考えには変わりはない。 |
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