アメリカ連銀がテーパリング(金融緩和縮小)に言及したことで、世界の株式市場は5-10%下落した。 特に香港ハンセン指数は中国の巨大IT企業(アリババやテンセント)への締め付けが明確に示され、また学習塾への締め付けもあり中国株式市場につられて一気に下落した。先進国は「金融緩和」というモルヒネを打ち続けており、中国を中心とした新興国に巨額の資金が流れていた。緩和で何倍にもレバレッジを効かせたマネーが、世界中どこにも逃げ場がないマネーがのたうち回っている… ように見える。 そして大方の予想通り、株価は緩やかに回復し今に至る。特にアメリカ。先進国の中でも最もコロナ対策に空前絶後の資金をつぎ込んだ国だ。リーマンショック時に7,000億ドルで「空前絶後」と言われていたのに、コロナ対策で5兆ドルの資金が注ぎ込まれた。 その代償として、アメリカではインフレ率が4-5%と一気に上昇したが、これがまさにこの緊急緩和の成果と悪影響であろう。日本は景気が悪くなって金融緩和しなかったがために終わりなきデフレに突入してしまったが、アメリカは同じ轍を踏まなかった。 しかし軽いとはいえインフレが起きてしまい、インフレを抑えるためにパウエル議長はテーパリングに言及せざるを得ない事態となっている。もぐらたたきのように緩和しすぎたことで問題が出てくるとたたいていく作業が繰り返される。現在は食料品やエネルギー価格の上昇という素朴な問題ではあるが、今後はノンバンク系の金融機関を通じた金融商品の破綻や不動産市場の冷え込みなど、緩和をせざるを得ない状況のなかでよりシビアな問題が出てくるものと予想される。 かつての日本でもそうだったし、ドットコムバブルでもそうだったし、2010年台中ごろの中国でもそうだった。緩和で資産価格が上昇しているときは全能感に浸り、労せずに手に入れた資金は次のバブルを生む。バブルなので中身がないと分かっていても、「自分だけ乗り遅れたらどうしよう」と思うものなのだ。 このスイッチのレターを読んでくださっている方にはぜひ相場の綾を知っていて欲しい。「もっと上がる」とみんなが思っているときには、それはちょっと危険なサインだ。逆に「市場は今後もっと悪くなる」とニュースアナウンサーがけたたましく喋っていれば、それは絶好の買い場となる。 |
ポートフォリオ |
上値は相変わらず重いものの、やはり今すぐ景気後退期局面が来るとは考えにくい。リスクオンの姿勢は当面続くだろう。 |