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運用成績は有効な指標ではあるものの鵜呑みにしてはいけない
過去5年、3年、1年などのIFAのプロバイダー別運用成績は、IFAを選ぶ上で何よりも重視すべき!というような事を書いている記事やセミナーでの講演をよく見かけます。しかし、このような事は本当に積み立て投資を理解している人間が言っている事だとは思えません。
もちろん、お客様の資産を増やすのがIFAの使命ですから、運用成績は大事です。過去5年の平均リターンが3%のA社よりも10%のB社の方が概ね良いリターンを出しているのは間違いないかもしれません。
ただ、だからと言ってB社を選ぶのは早計です。
そもそも運用成績は本当かどうか分からない
なぜ運用成績を鵜呑みにしてはいけないか?それは、その成績がどのように計算されているものか、顧客側からは知る由もないからです。
「◯◯年の時点でこのようなポートフォリオを組んだ結果、☓☓年後には15%のリターンになりました」
と言われても、それは単なるシミュレーションかもしれないし、本当にそのポートフォリオを組んで利益を出した顧客がいたのかどうか、調べようがありません。
つまり、リターン実績はいくらでも捏造出来るのです。
そもそも、投資はリターンを確約するものでは無いのですから、過去のリターンを見て未来の事を判断するべきではありません。
もっと酷い場合は、特定のファンドだけを取り上げて、「このファンドの過去の利回りは20%でした、私達はこんなファンドを選んでいます」というような言い方をしている場合もありますが、それはそのファンドがたまたまリターンを出しているだけであって、そのIFAの力ではありません。
世の中には星の数ほどファンドがありますから、特定のファンドの特定の期間を取り上げて、これはいいですよ、これは悪いですよ、と誤魔化すことはいくらでも出来てしまいます。重要なのはひとつひとつのファンドの良し悪しではなく、ファンドの組み合わせ、ポートフォリオの組み方です。
そして、海外ファンドであることも問題を厄介にしています。日本のWEB等では情報が検索できないサイトですので、英語が苦手な日本人はそれを鵜呑みにするしかありません。
運用成績があてにならないもうひとつの理由
仮に、運用成績が本当の数値だったとしましょう。しかしそれでも、その数値はIFAを判断する指標としては弱いと言わざるを得ません。
なぜなら、特に積み立て投資の場合、将来のリターンの跳ね返りを見据えて、敢えて下落しているものに集中して投資をする局面もあるからです。
例えば、2015年は中国経済に対する不安、オイル価格の下落により、新興国株や資源系ファンドの価格が落ち込みました。
ここでこれらのファンドを売るという選択肢を取ったIFAもいると聞きますが、普通に考えると、ここは買い増しをするのが定石です。
3年後、5年後の回復を睨んで、安い内にたくさん買っておくのです。まさにドルコスト平均法の考え方です。
優秀なIFAでも明日円高になるか円安になるかはほとんど当てられませんが、1年、3年、5年の長期スパンであればそのファンドがどういう動きをするかは予想できます。そこがアドバイザーの力量です。
ですので、長期投資の王道をしっかり進んでいるポートフォリオであれば、落ち込んでいる局面はあって然るべきものであり、そう考えると年毎の平均リターンに意味が無い事がお分かり頂けるかと思います。
IFAを判断する要素の優先順位
IFAの運用成績が信用出来ないものであるとするなら、何を基準にIFAを選べばよいのでしょうか?
それは、ライセンスの有無、アドバイザーとの相性、運用方針の明確さです。
ひとつずつ説明していきます。
ライセンスがあるかどうか
ライセンスについてはこのブログでも何度か取り上げていますが、オフショア生命保険商品を販売するためには、本来香港の金融ライセンスが必要です。
香港のファイナンシャル・アドバイザーは、一般的に投資と保険を組み合わせてクライアントに提案を行います。その為、投資と保険のライセンスが必要です。投資については
証券ライセンス(監督官庁Securities & Futures Commission、略してSFC)
保険については2つの組織があり、
Professional Insurance Brokers Association、略してPIBA)
または、
保険ライセンス(監督官庁Confederation of Insurance Brokers、略してCIB)
の認証が必要です。
保険ライセンスであるPIBAもしくはCIBについては、これだけでは投資商品のアドバイスが出来ません。IFAとして運用のアドバイスをするためには必ずSFCライセンスが必要です。
その為、正規のアドバイザーであれば、
SFC+PIBA
もしくは
SFC+CIB
のライセンスを持っていることが必須と言えるでしょう。
これについては以下の記事で詳しく書いています。
ライセンスの有無は最低条件ですので、優先順位とは言えないですが、ライセンス無しの自称アドバイザーが日本・香港に大量に生息していますので、面倒でも一度調べてみることをお勧めします。
その方の自己紹介や名刺にライセンス番号が書いてあっても、実際に調べてみると登録されていない、ライセンス捏造アドバイザーも存在します。
アドバイザーとの相性が良いかどうか
ライセンスの次に必要なのがアドバイザーとの相性です。大切なオカネを預ける相手であるアドバイザーをあなたが信頼できるかどうか。
これはフィーリングも大事ですが、それだけでは不安だと思いますので、例えば金融ニュースに関する以下の様な質問をしてみてください。
「アメリカの利上げは今後のポートフォリオにどういう影響があるでしょうか?」
「原油価格は今後どのように動くでしょうか?」
など、ごくごくありきたりな質問で構いません。
肝心なことは、このような質問にアドバイザーが臆すること無く、あなたにとって分かりやすい言葉で説明してくれるかどうかです。
良くわからない難しい金融用語を並べてきた場合は要注意です。
また、直接的な手段として履歴書を見せてもらうのもいいでしょう。海外ではアドバイザーに履歴書を要求するのは普通です。
フェイスブックやツイッターは信用しない
最近よくある傾向として、フェイスブックを見たら知り合いが多そうだし、たくさんセミナーにも呼ばれていて凄そうな人だったからその人を信用してしまう、という事があります。
極端な例ですが、あなたは与◯翼にお金を預けたいと思いますか?
アドバイザーとしての優秀さと、SNSでの活動や写真の多さは比例しません。むしろそういったマーケティングに時間を割いている人間こそ、上記のような金融に関する質問にきっちり答えられなかったりします。
運用方針が明確であるかどうか
運用成績よりも、重要なのは運用方針です。
まず、今の世界経済をどう見ているか?ポートフォリオの組み方に反映される基本的な資産運用観がどういったものかを聞きます。
これからは水ビジネスが来る!
◯◯がデフォルト危機にあるからヨーロッパが危ない!
など、特定の事象だけにフォーカスしているものは危険です。
資産運用においてバランスの取れたポートフォリオを組むためには、ニュースに踊らされるのではなく、アメリカ、ヨーロッパ、アジア新興国など、幅広い視点で経済の流れを見据える事が必要です。運用方針の中に情報の偏りが無いか、特定のファンドに偏っていないかを見てください。
傾向として、危機を煽ってくる場合はまともな運用方針がない場合が多いです。典型的なのは日本のデフォルト危機を叫ぶパターンですね。
また、リスクレベルに応じた、株式と債券の割合や、コモディティ銘柄をどのように組入れるか、スイッチング、アセット・アロケーションをどのようなタイミングで行うかなども重要です。
最後に運用成績
ライセンスの有無、アドバイザーとの相性、運用成績、これをしっかり見定めた上で、複数のIFAで迷った場合は運用成績を見ればいいと思います。運用成績はあくまで過去の数値なので、未来を保証するものでは無いことはお分かりかと思いますが、くれぐれも参考程度にとどめてください。
また、運用のことを聞くとやたらと”複利の効果”を全面に出してくる人にも気をつけてください。これこそ自称アドバイザー、偽IFAの典型です。複利とは計算方法のひとつであって、運用方法を指すものではありません。
「複利で運用する」
という言葉が独り歩きしている印象がありますが、「運用で利益が出れば、それをまた次の年に再投資する」という事であって、「運用で毎年利益が必ず出るので、その運用で得た利益をまた次の年に再投資する」とは言っていません、
複利の誤解については以下の記事でも詳しく書いていますので是非ご覧ください。
オフショア積み立て投資で年利10%はカタイのか?(2)〜複利運用の誤解〜
そのIFA、アドバイザーが本物かどうか迷った時は、これらの判断基準に照らし合わせて考えることをお勧めします。