市場がこの4ヶ月で大幅に上昇した。アメリカの株式市場の代表的な指数であるS&P500では、12月からの下落をほとんどカバーするところまで来ている。連銀が利上げのストップを宣言したことで利上げの恐怖も消え去り、トランプがなんとなく期日を延ばしている米中貿易戦争もインパクトがうすれ、投資家の安心感が戻ってきた。
私どもの見立てでは、2018年暮れの下げは数年に1度の大きな調整局面でポートフォリオの大幅な変更を迫られるものとしていた。しかし現実には20%程度のこの下げは日常的なボラティリティの1つであったことが証明された。すなわち私どもの見立ては間違ってたことになる。すべてのポートフォリオを思い切ってディフェンシブにできなかったのは、このせいでもある。もし昨年末時点でディフェンシブにしていれば、この4ヶ月間のアップを取れなかった。
弊社のお客様は戦略的にポートフォリオを放置していたことで、ここ数ヶ月の金融市場の膨張を享受できた方がほとんどだと思う。
日々市場と対峙している私たちでも市場予測は困難だ。金融市場独特の空気感、今アクセルを踏むべきときなのかブレーキをかけるべきときなのか、は最低でも10年くらいの訓練が必要になる。金融市場は様々な思惑が交差する。教科書どおりにはいかず、まさに市場とがっぷり四つに組んでいかなければならない。私どももさらなる研鑽をつんでいく所存である。
Japanification
金融市場には一度たりとも同じ状況は訪れないが、似たようなパターンを繰り返すことはある。現在、投資家はまた政府は中央銀行の政策に甘えるような状況となっている。いわゆる「催促相場」というやつである。株式が大きく伸びないから、市場が買いをやめて政府や中央銀行の出方を待っている。しかしアメリカはすでに大型減税を実施したし、連銀ももう利上げストップ宣言をしている。本来ならば市場本来の力=企業が稼ぐ力に頼らなければならない場面ではある。
企業が稼ぐ力は利益にあらわれるが、4月に入って大手企業が続々と業績を発表している。中身としては堅調ではあるが、想定外に大きく稼いでいるわけでもないといったところか。
そしてこの状況というのは日本の2000年前半と酷似している。すなわち
– 銀行は公的資金の注入を得て息を吹き返した。しかし融資残高は伸びていない。
– 消費もある程度活況を呈しているものの、景気がもどったという実感はなく数字だけが独り歩きしている
– 景気がいいはずなのに利上げができない
私たちはこれを「未来の需要を刈り取った」状況といっている。世界が日本化していることをさして、Japanificationという造語まで作られている。堅実な経済成長なく、思惑だけで金融市場が動くようになると怖い。いったん思惑売りが発生すると、投資家は本来の「企業業績」という寄る辺を大きく下回るまで売りを続けてしまう。特に今のような「なんとなく安心している状況」が続くとあとの売りがこわい。
いわゆる「恐怖指数(グラフ中では青いライン)」と呼ばれている指数もすっかり下がっている。恐怖指数が下がっているということは、市場に恐怖はなく安心が増えているということだ。市場が荒れるのは、この恐怖指数が下がりきったところからとなる。
ポートフォリオ
今後、また経済事件がない限りは金融市場は一進一退を繰り返すだろう。一進一退でポートフォリオを毀損することはないが、逆に今の状況から最高値+10%(S&P500でいうと3200-3300)を超えるようなことがあれば金融市場の過熱感は高まったとみるべきであり、すなわち高値づかみをさせられていると考えるだろう。
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