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なぜ多くの日本人がHSBC口座をほったらかしにしているのか?
香港で仕事をしていると本当によく聞くのが、数年前にHSBCの銀行口座を開設したのですが、その後一度も使っておらず、そのままつかなくなってしまったという人の声です。これが日本だとしたら不思議なことですね。何かに使うために銀行口座を開設したのではないでしょうか?なぜ、作った銀行口座が使われないままなのでしょうか?
こういう人の大半が、HSBC口座開設ツアーと称したオフショア投資商品契約香港ツアーなどで業者の言葉巧みに乗せられて作ってしまったというパターンが多いです。しかし、いくらツアーだったとは言え、なぜここまで多くの人が無目的に口座開設をしてしまうのでしょうか?そのカラクリについて考えてみたいと思います。
オフショア投資に海外銀行口座は必須なのか?
何を言っているんだ?海外で投資をするのだから海外の銀行口座が必要なのが当たり前だろう!と思うかもしれません。しかし本当にそうでしょうか?確かに、常識的に考えれば日本で投資をしようと思ったら証券口座が必要ですし、銀行を通して投資商品を購入しようにも銀行口座が必要です。だからと言って、海外で投資する際に海外に銀行口座が必要でしょうか?
既にあなたは日本の銀行口座を持っています。そして日本のクレジットカードも持っているでしょう。それで充分ではないでしょうか?つまり、冷静に考えると、オフショア投資に海外銀行口座開設は必須ではないのです。少し具体的に考えてみましょう。多くの場合、オフショア投資契約を行うのと同時に銀行口座を開設しています。その為、契約時の事を考えます。
まずは一括投資。一括投資をやる為には当然投資金の一括払いが必要ですが、日本の銀行から海外送金すればいいですね。そして、少しテクニックが必要ですが現金を直接香港に持ち込むことも出来ます。
次に積み立て投資。毎月の支払いが必要(※)ですので、当然海外送金や現金持ち込みは現実的ではありません。その為、クレジットカード払いか口座振替という事になります。口座振替の場合は香港に銀行口座が必要です。これは間違いありません。しかし実際はこれを選択する人はそこまで多くありません。理由はいくつかありますが、何年分ものまとまった金額の外貨を海外口座に入れなけければいけない為、それが出来るような人は一括投資を選択するというのも大きな理由の一つです。
日本人が契約できるようなオフショア投資商品の場合、クレジットカード払いが出来る場合がほとんどで、VISAとMASTERは必ず使えますので、かなりの日本人がクレジットカード払いを選択します。クレジットカード払いの場合、もちろん香港に銀行口座は不要ですね。
つまり、少なくとも数年分の積み立てを出来るくらいのまとまった金額を持っており、積み立て投資を口座振替で行う場合のみ、香港の銀行口座が必要という事であって、「オフショア投資に海外銀行口座はそもそも必須ではない」という事です。(必須ではないと言っているだけで不要とは言っていませんのでご注意ください)
※商品によっては四半期払い、半年払い、年払いも可能ですがその場合でも毎回香港に行くのは大変ですね。
そもそもHSBCなどの海外口座活用手段は3つ
それでは、何のために香港に銀行口座を作るのか、その正当な目的をおさらいしてみましょう。
1.HSBC経由の投資を行う
HSBC投資口座を開くことにより、HSBC経由で株式、債権などを買うことが出来ます。もちろん、単純に外貨預金をして、定期預金を行う事なども立派な投資です。投資口座は、通常のHSBC Saving口座やHSBC Current口座とは異なり、別の開設手続きが必要ですが、同時に開設する事もできます。
2.投資商品の支払いもしくは受取手段
香港の金融プロバイダー経由で投資をしている方であれば、投資資金をHSBC口座から送金する、もしくは毎月の積み立てをHSBC口座から振替えするという活用方法があります。また、投資を行った結果得た利益を払い戻す際にHSBC口座で受け取る事も出来ます。
ただ、ここで注意点があります。
投資金は必ずHSBCから送金、受け取りはHSBC口座でないとダメ!
と大きな勘違いをしている方が多数いらっしゃいますが、決してそんな事はありません。
投資金の送金は日本の口座から海外送金が当然可能ですし、クレジットカードで支払う事も出来ます。また、投資で得た利益の受け取り口座ですが、HSBCに限らず、世界中どこの銀行でも受取可能です。
3.海外旅行・滞在時の財布として活用
HSBCを海外の財布として活用する方法もあります。HSBCは世界中にATMがありますし、支店も各国にありますので、HSBCに口座を持っていれば海外旅行やビジネスの出張などで非常に役立ちます。
なぜHSBC口座開設ツアーの人気が衰えないのか?
数年前から未だに続いている、口座開設を皮切りにしたオフショア投資セミナー、ほとんどのツアーが、口座開設、金融機関見学、金融商品契約という流れになっています。このようなセミナーが無くならないのはなぜでしょうか?なぜ誰もが言われるがままに海外銀行口座を作るのでしょうか?ほとんどの方にとって、銀行口座開設がオフショア投資商品契約に必要ではないのにも関わらず。
HSBC口座開設を勧めるのは、オフショア投資という大海に一歩踏み出したという高揚感を煽る業者の手口
口座開設ツアーを企画している業者は、多くの場合、IFAかもしくはIFAと契約している紹介代理店です。IFAと言っても、大々的にツアーばかりやっている所はほとんどがライセンスを持たない偽IFAの事が多いです。彼らの最終目的は当然、オフショア投資投資商品の契約にあります。しかし、「投資商品契約ツアー」としてしまうと客が敬遠してしまうため、客が食いつきやすいHSBC口座開設を餌にしているのです。
こういった業者は、口座開設がいかにもお金持ちへの第一歩であるかのような錯覚を起こさせるのに長けています。確かに、今まで日本でしか生きてこなかった人にとっては、海外に口座を持っているというと何となく聞こえが良く、人より一歩進んだような気になれるのかもしれません。
業者の謳い文句はコレです。
「HSBCは投資で得た利益の受け皿です」
確かに受け皿は必要です。しかし、前述したように受け皿はHSBCである必要は無いし、仮に受け皿であったとして、いったい何十年後の話をしているのでしょうか?
投資が満期を迎える前であっても、投資金を一部引き出す事は可能です。一部解約などと言いますが、それをやる時にはHSBCを受取口座とする意味は多少あるでしょう。しかし、一部引き出した瞬間に毎月5万円で1億円というプランは崩れることをお忘れなく。
長期投資契約と受け皿としての口座開設を同時にやる矛盾
オフショアに限らず、投資で安定した利益を得る秘訣はシンプルで、長期分散投資です。この点についての詳細は別記事に譲りますが、「毎月5万円の積み立てを30年間続ければ1億円」というよくある詐欺投資話でもあるように、長期投資という点においては業者は正しい事を言っています。
しかし、30年間もの間、長期投資をして口座を動かさないつもりなら、ただでさえ維持が大変な海外口座を利益の受け皿としてすぐに作る必要など無いと思いませんか?それとも、業者が言っている「投資で得た利益」というのは毎年配当のように入ってくるものなのでしょうか?確かにそういう商品も世の中にはありますが、業者がオススメしてくる長期積み立て投資商品ではそのようなものはありません。
つまり、30年間長期投資して下さい、という話をしておきながら、短期の受け皿としか思えない口座開設をさせるのはおかしい事だと気がつくと思います。これが、口座開設した日本人のほとんどが長期間口座をほったらかしにする理由です。
業者が狙っているのは口座開設の先にある投資契約
これまでの話で、結局、業者にとってHSBC口座開設はただの餌に過ぎないという事がお分かり頂けたかと思います。長期投資、更には毎月5万円で30年積み立てると1億円などといううまそうな、かつあり得ない話を餌にしながら、短期での引き出しに対応できるようHSBC口座を作らせるという矛盾した行為を顧客に煽っている、これが業者の実態で、まるで顧客の事を考えない行為です。
オフショア投資も口座開設もライフプランを立てる所から
ではどうすればいいのでしょうか?口座はやはり作らない方がいいのでしょうか?それとも将来に備えてやはり今のうちに作っておいた方いいのでしょうか?
こんな声が聞こえてきそうですが、通常のIFAであれば、まずはクライアントのライフプランのコンサルティングから入ります。30年後に1億円があったら誰でも嬉しいのは当たり前です。あなたに必要なことは、今後20年でも30年でもいいですが、ライフプランをしっかり立て、将来お金が必要になりそうなライフイベントを見極めることです。投資契約をする前に、30年間の間にその積み立てを解約したり止めたりしたいと思うことが何回あるか、リアルに想像することです。
「口座開設はオフショア投資の第一歩」というような言葉に惑わされず、ライフプランを考えたうえで、本当に必要であれば口座開設を行えばきっと口座は有効活用できると思います。