先月は香港のデモが香港経済にどのような影響を及ぼすかについて説明した。メディアで報道されているとおり香港デモはいまだ収束の兆しが見えておらず、もともとデモがなくとも脆弱だった香港経済にいっそうの打撃を与えている。第三四半期のマイナス成長は確実な情勢で、落ち込み幅は去年比で5%を超えるのではないかという予測もされている。とにもかくにもリセッション(景気後退)は確実な様子だ。
とはいえ香港の株式市場や不動産市場はまだ大幅な落ち込みを見せておらず、ピークからたかだか10-15%で投資家としてはなかなか触手が伸びる状況ではないのだが。
世界経済は減退の兆しを見せながらも耐えている
先月「石油価格は上昇はしないのではないか」という予想をしたが、予想どおり石油価格は上昇せずむしろやや下落した。世界的にカネ余りで投機的マネーが向かいやすい状況だとはいうものの、世界経済が減速しつつあるなかで石油価格だけが上昇するというシナリオは描きにくい。
すでに18ヶ月続いている米中貿易戦争に具体的な進展がない上(先日トランプはツイッターで農産物、技術、金融の分野でポジティブな合意に至ったと書いているが、それが果たして履行されるのかは分からない)、この米中関係のせいで明らかに農作物や機械ともに生産が落ち込んでいる。
1990年からの三回の景気後退では中央銀行はそれぞれ5%以上の利下げを行ったが、現在中央銀行が利下げができる幅はその半分もない。また日本やヨーロッパは部分的にマイナス金利を導入しているため、次の景気後退局面はリーマンショック時のような1年間で終わるものではなく長引くだろう。また、iMFも2019年度の世界経済の成長率を引き下げている。
次の景気後退局面がいつ来るのかを予測するのは難しいが、以下の理由から2020年度中に景気後退局面がくる可能性は50%未満であると考えている。
・アメリカの失業率が異様に低いこと
・金融政策ツールが少ないとはいえ、中銀は指をくわえて待っているわけではないこと
・日米欧と違って、中国はまだまだショックに耐えられる体質であること
・家計における債務の割合が突出していないこと
中央銀行の努力の甲斐もあって、均衡状態がしばらく続くのではないか。
ポートフォリオ
すでに保守的な内容でポートフォリオを組んでいるので、今この段階でドラスティックに変更をする必要はないと考えている。お客様の中には「米中貿易戦争が深刻化している今こそ、逆張りの発想で大胆にリスクを取るべきではないか」というお声もあった。
逆張りの発想はもちろん理解しているが、私どもの考える「深刻」のレベルが現在のものとは違うのだ。現在景気は減退しつつあるものの「深刻」というレベルにはまだまだ遠い。私どもの考える「深刻」というのは大企業や金融機関が連鎖倒産するような事態である。そうなれば私どもも全力でリスクを取りに行くことになる。
現状はまだまだ「深刻」のレベルが浅いという認識なのだ。
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