目次
なぜ1億円ポートフォリオホルダーをとりあげるのか?
私1億円ないし読まなくてもいいわ…と思った方。少し待って下さい。私たちの経験上、1億円ポートフォリオホルダーであっても、100万円ポートフォリオホルダーであってもリスクの取り方が大きく異るわけではありません。
しかも1億円ポートフォリオホルダーは先に様々な投資をし失敗を踏んできているだけに新しく資産運用をされる方の参考になることはよくあります。ご自身の資産額だけを比較して参考にならないとするのはもったいないのです。
ただし、1億円ポートフォリオホルダーと一口にいってもその資産をどうやって築いたかによってリスクに対する考え方が全く異なります。そこで、私たちが実際にお会いしお話していくなかで資産運用に対する傾向が異なる3つのタイプ(創業者 / プロフェッショナル / 地主)に分けて検討してみます。
さらに、このタイプ別のポートフォリオの中身(資産運用の中)を覗いた後、資産運用に対する期待や今後の考え、そして悩み(資産運用の外)についてもみていくことで、1億円ポートフォリオホルダーが資産運用をどのように考えているのかを読み解きながら、見習うべき資産運用のエッセンスを提供できたらと思います。
43歳/男性/東京在住、創業者の場合
では、まずは創業者タイプから。以下の例は実際にお会いしたクライアントにデフォルメを加えています。
男性 / 43才 / 東京在住
長野から大学で東京にでてきて、卒業後は29歳まで小さな魚専門の商社勤務、北欧で魚の買い付けをしていました。今となってはネット社会だから小さなレストランでも仕入れもグローバルにやっていたりするけど当時は僕らみたいな小さな専門商社がいっぱいあったんだよね。
北欧のど田舎の港町のバーで漁師たちと酒を飲みながら、言葉の端々から魚のクオリティの探りをいれて東京に買い付け量をFAXする仕事。当時は1ヶ月で5億円ぶんくらいの仕入れを担当していました。
加工工場まで入って品質を確かめるのは自分くらいだったんじゃないかな。自分が仕入れた魚が高値で売れたとき、あるいは魚の収穫高予想があたってクライアントに感謝されたときには非常に達成感がありました。
そこでビジネスのやり方を一通り勉強させてもらって、アメリカの大学院のMBAコースに2年間行きました。それから北欧のおしゃれな輸入雑貨の商社を始めることになって、これが大当たり。一時北欧のものが流行したでしょ。バブルの時代に売れたような高級品ではなくて、北欧の生活雑貨が家にあると丁寧に生活をしているようなイメージがあるよね。
まぁ、分かりやすい見栄の消費に対するアンチテーゼとしての、新しいタイプの消費だよね。ビジネスは2000年代中盤くらいが一番よかったかな。東急◯ンズとかロ◯トなんかに入れてもらって、よく売れました。今は百均の雑貨なんかもオシャレになってきてるからウチの会社に当時の勢いはもうない。今は4人しか従業員いないのだけれど、年間1億円以上の利益は確保できています。
商売が少し落ち着いた8年前に結婚して娘が一人。昔はよく遊んで派手にオカネを使っていたけれど、結婚したしそういう遊びにも飽きちゃって地味な生活しています。次にビジネスを何か仕掛けようとすると、45歳くらいまでに何か新しいこと始めたい…とは思いつつも家族ができちゃったからかな、守りに入ってアイデアが出てこない。
資産運用? 社会人になったころからやってるから、かれこれ投資歴は20年くらいになるかな。会社の立ち上げで忙しかったとき以外は、何かしらやってると思う。トータルでプラスにはなっていると思うけれど、どれくらいプラスになっているのかは分からない。
一時FXにハマってしまって、2,000万円くらい溶かしちゃったことがある。ギャンブルみたいな高レバレッジFXはもうやらない。今は擬似的にFX取引みたいな感じで、外貨預金はがちゃがちゃ動かしてるけどね。
けど現物株は順調。だから現物株式にはレバレッジかけるよ。商社にいた人間だからビジネスに対する嗅覚は人よりも鋭いと思う。だから次に何が流行りそうかというのは常に考えてるし、けっこうあたるのよ。
銀行には昔融資をしてもらって窮地をしのいだことがあるから、銀行とは付き合いでカネも借りるし営業がもってくるものはあまりよく考えずに買ってあげている。会社にキャッシュは十分にあるから別に融資を受けなくてもいいんだけれど、銀行からオカネを借りられるっていうのはほら、一種ステータスでしょ。それに次に何かビジネスを起こそうとなったときに銀行に対して信用があったほうがいいでしょ。証券会社の人との付き合いもあるけど、いつも強引に売買させられているから今のところあまりいい思いはしていない。
相続税対策として資産管理会社そろそろ作ったほうがいいですよと言われているけどどうなんだろう。また個別債券の販売にも来てる。一本1億円で5本まとめて5億でどうでしょう、みたいな。そこまで大きな金融資産を持っているわけじゃないし、発行元の会社が債務不履行になったときが怖いから断った。
現物株式はほとんどネット証券で取引してます。でもここぞというときにはレバレッジをかけます。これはうまくいったことのほうが今のところは多いかな。たとえばネット系の会社だと値動き激しいじゃない。それに乗っかっていく感じ。
香港とアメリカにそれぞれ証券口座があります。アメリカのほうは”アメリカ居住じゃないと口座閉じます”と言われて香港にぜんぶ移そうかと悩んでいます。
プライベートバンクにも興味があってヨーロッパ系のプライベートバンクの日本支店にも行ったりしたんだけど、結局日本の証券会社と出来ること同じでした。プライベートバンクだからすごい提案を持っているわけじゃないんだよね。オフィスがきれい、待ち時間に出るコーヒーがうまい、っていうことくらいで。
香港の資産運用は知人の紹介でした。香港での運用は付き合いで始めたこともあって少額。ポートフォリオ全体からみても微々たるものだから口座開設後ほとんど確認してない。アメリカの口座が閉じられるまでに香港のアドバイザーの提案聞いてみて、よければきちんと始めようかなと思ってる。
あとは、分からないことには投資しない。付き合いのある証券会社もヘッジファンドとか勧めてくるんだけど、やっぱり資産運用の中にもビジネスの手触りが欲しいし、中身のよくわからないヘッジファンドに投資をしてしまうと増えても減っても何の学びもないでしょ。
確かに資産の分散からすると好ましいのかもしれないけど、資産が増えた理由、減った理由のポイントを自分の頭のなかでざっくり理解しておかないと、なんとなく気持ち悪い。ほら、例えば今だと世界中の中央銀行が超緩和的な政策をとっているから株とか不動産の資産価値が上昇するわけでしょ。逆にこれから基準金利が上昇していくと不動産や自動車業界なんかは特に分が悪いよね。
これから資産運用を始める人にアドバイス? そうだな、忙しくニュースを拾って反応することはなくても、大きな枠のなかで自分が行っている資産運用を理解する努力をするというのは大切なポイントじゃないかなぁ。つまり口座の中のオカネが増えたり減ったりすることと、社会の動きとの因果関係をとらえようと努力するっていうことかな。そのためにはいろいろなことに興味を持たなきゃいけないね。
資産運用の中 – 現在のポートフォリオ
非金融資産
都内の一軒家 – 1億円
金融資産 – 6億円
資産運用の外 – 資産運用に対する期待 / 悩み
期待
運用期間 – 3-5年
期待運用利回り – 7%/年
騰落 – -20%くらいまでは許容
レバレッジ – Yes,ここぞと思ったときには大きくかける
資産運用をする期間でいうと、これからずっと、というのが正解になると思う。だけど運用対象の銘柄についてはそこまで長くみないかもしれない。電力なんかのディフェンシブな銘柄を買ってずっと放置というよりは、動きのある銘柄を買っていきたい。現物株式の取引が最近少ししんどくなってきたから、ファンドで保有してくというのは一つの正解なのかもしれない。
運用利回りは7%くらい期待します。これくらいだったら自分でも達成できるでしょ。とはいってもきちんと計算していないからどれくらい今まで儲かったのかもよく分かってないけれど。たぶん年間7%以上はいっているはず。
騰落は、レバレッジをかければかけるほど高くなるから一概にはいえないけれど株式中心だったら20%くらいの下落は当然あるよね。なので問題は騰落率というよりは、たとえば自分の保有している株式が20%落ちたときに押し目買いができるように日頃から現金を積んでおくということ。キャッシュが脇に積んであれば多少の下落はむしろ嬉しいくらい。
個人投資家が稼ぐにはこの方法が一番だね。リーマン・ショックのときはビビってしまって押し目買いのチャンスを逃してしまったのを今も少し後悔しています。やはり自分のオカネということになると、なかなか冷静な判断ができないからね。
日本でも資産運用に詳しいファイナンシャルプランナーからアドバイスをもらっています。香港でもアドバイザーの意見を聞けるというのは嬉しいですね。
悩み-事業をどうするか
既存のビジネスが順調であるため、資産運用しているものを現金化して事業を拡大するのか、あるいは既存事業とは異なるビジネスチャンスに資金を投入するか、それともビジネスはあまり手広くやらずに資産運用に精を出すか。
日本のマーケットをこれ以上拡大するのは大変だけど、たとえば中国とか東南アジアであれば社会が成熟するにつれ消費のスタイルが変化していくだろうから僕が取り扱っているおしゃれな北欧雑貨はいずれあたると思う。
問題は、言葉が十分に通じないところできちんと根を張ってビジネスをしていく根性が自分にあるかどうか。あと10歳若ければ間違いなくチャレンジしていたのだろうけれど、後継者がいるわけじゃないし… そう考えると、結局余剰資産は資産運用でふやすという選択肢になるんだと思う。
この1億円ポートフォリオホルダーから見習いたいエッセンス
ポイント1 – 自分の強みを知っている
商社にいて、”ビジネスの仕組みが人よりもよく分かる”ということを自覚されています。またその強みを資産運用に結びつけ、実際に成果を出しています。このように、ご自身の強みが何であるかを知っているということは資産運用においては大きな効果を発揮することがあります。また、ご自身のポートフォリオの増減と世相をリンクさせることができるので、ニュースを読むときにも理解のスピードが違ってくることでしょう。
ポイント2 – 知らないことには手を出さない
この方は様々なことに大変な興味をもたれているのですが、資産運用においては自分の理解が及ばないことに対しては消極的です。ヘッジファンドなど、知らないものを知らないものとして使うのであれば問題ありませんが通常はそういうわけにはいきません。おそらくそういう知らないものに手を出してしまった自分を責めたり悔やんだりと消極的なエネルギーがたくさん出てきてしまいます。いきおい資産運用すべてをやめてしまうということにもつながりかねないので、最初から理解できそうにないことには手を出さないことが賢明です。
ポイント3 – 余剰キャッシュをキープ
どのような時においても、ATMからすぐ引き出せる手元現金(ここでは札束という意味ではなくいつでも引き出せる預貯金)は資産運用にとっては強い味方です。手元現金があるおかげで、いざというときに良くないタイミングでポートフォリオを取り崩すこともないし、更には資産が下落したときには安くでその資産を買い増すことができるのです。
IFAスイッチより
正直いって、資産運用面からは何もコメントすることがないくらいの資産運用強者です。
一つだけ言えることがあるとすると、この方は攻撃的なポートフォリオを組みがち。自分は人からどう思われようと自分の道を行くタイプであると思うなら、過剰にリスクを取りに行く傾向にあることは自覚しておいたほうがいいでしょう。
たとえば、金融資産の半分は自分が良い投資先だと思っている投資先に投資をせずに配偶者に投資先を選択させる、などしたほうがいいでしょう。事業がうまくいっている創業者の配偶者は往々にして財布の紐が堅いので、堅実な運用先をチョイスしてくれるに違いありません。