・2019年は低い成長にもかかわわらず、株式市場では予想していたよりも高い利回りとなった ・債券市場については予想していたような質への大きな逃避 額面だけみると、通年ではクライアントの皆様の時価総額は軒並み上昇しているはずである。途中保守的なポートフォリオに変更したものの、ドラスティックな変更ではなかったため上昇分を取りこぼしたということはないだろう。弊社を信じてついてきてくださった方々に最大限の感謝を申し上げたい。 まず、昨年の初めに書いたように米中貿易戦争が長引くという点については私どもの予想は当たっていたといえる。この貿易戦争がアメリカ側の貿易赤字の解消を超えて世界の覇権を誰が握るのかという枠組みであることを考えると、時間はかかっても玉虫色の決着はあり得ないと考えている。決着したと見えるのは、単に小康状態が続いているだけだ。 しかし同時に、中国の信用状況が一気に悪くなると予想していた見立ては外れたといえる。確かに経済成長は鈍化はしているし利益のあがらない国営企業を支え続けているという点では中国の経済構造はあまり変化していない。中国はジリ貧には弱くサドンデスには強い(立ち直りが早い)という認識なので、崩れるときは一気に来ると予想していた。これは後で述べるように単に2019年中には起こらなかったというだけなのかもしれない。 また債券市場は高格付けはもちろん低格付けも活況で、「投資適格以上の格付けの債券と未満の格付けの債券とでは価格差に大きなギャップが生じる」と考えていたがこれはある程度は当たっていたといえる。低格付けの債券は売られ、逆に投資妙味が生まれてきている。「ハイイールド」とか「エマージング」とか名前のつく債券ファンドを仕込んでおくのであればタイミング的には悪くない。 |
2020年の予想
2020年は経済成長の鈍化により2019年ほどのリターンは得られなくなると予想市場参加者はすでに今年のトランプ再選を予想している中国の財政出動が効かなくなる 世界の企業の利益はここ1年横ばいとなっている。株価が高いか安いかを判断する指標にPER(株価収益率)があるが、S&P500は現在25倍前後、すでに高PERの領域にある。すなわち「割高」と判断される水準だ。もちろんドットコムバブルの時代のようにPERなんて関係なく株価が上昇してきた時代もあった。しかし現在ドットコムバブルに代わるような市場ドライバーはないので過去の水準にあわせて考えるのが妥当だ。 昨年ポートフォリオをやや保守的なものに変更したのもPERが高値圏を目指すときには大きな利回りが得られることはなく、むしろ次の下落局面に備える必要があるという直感からだ。 そしてトランプ大統領。弾劾裁判を待つまでもなくスキャンダルまみれで短命に終わるかと思いきや、意外や意外ここにきて再び勢いを取り戻している。今年再選のための布石として米中貿易戦争の玉虫色のディールやイランへの攻撃などやりたい放題ではあるがまさに選挙公約であった「アメリカ・ファースト政策」を具現化している。投資家ではなく一市民として彼に意見がないわけではないが、金融市場は彼の再選をすでに読み込み、波乱はないと読んでいる。株式市場が安定しているのはこの要因もある。 そして中国。米中貿易戦争に負けまいと度重なる財政出動をしているが、信用の創造にはつながっていない(下グラフ)。中国企業は少なくとも2年前から借金を借金で返すようになっており中国経済が危ういと見る理由はまさにそこにある。特に今年は社債の満期を迎えるものが発行額の3分の1にものぼる。中国企業は新しい社債を発行するか、さもなければデフォルトや債務整理ということになる。中国経済が落ち込んだら絶好の買い場が訪れるだろうが、それは早ければ今年か来年ということになる。 |

ポートフォリオ
総括すると、株式市場は伸び悩みトランプは再選。波乱が一つもない今年はつまらない一年になるのではないか。つまらない市場にはつまらないポートフォリオだが、すでに株式や債券と十分に分散されている現在のポートフォリオは十分つまらないポートフォリオだといえる。ファンドの中身を見ながらより格付けの高い債券が含まれているファンドを選択したり、よりブルーチップが多くブレンドされているファンドを選択したりという差はあれど、基本的なリスクテイクには当面の間変更はない。 ただ、中東情勢の行方や米中貿易戦争が破滅的な方向に向かえば現在よりさらにポートフォリオを保守的とし次の買い場までじっと身を潜めることになるだろう。逆にニュースが好況を伝えたとしても、今以上にリスクテイクをすることはない。 |