アメリカの消費者物価指数が4月の統計で40年ぶりに8%を超えた。コロナによるサプライチェーンの混乱、ウクライナ・ロシアの紛争が引き金となって2020年までは1-3%の安定した物価上昇率であったのがここへきて一気に上昇した形だ。![]() それに応えて、米連銀は先月に0.5%の利上げを断行した。通常、0.25%刻みの利上げを行う連銀が一気に0.5%の利上げを断行した。連銀の責務は1. 雇用の安定そして 2. 物価の安定の2つである。雇用は安定しつつあるので、今は物価を安定させなければならないが、投資家は単純に「そもそも8%もインフレが起きているのに、最終的な利上げ目標である3%までで足りるのか、差し引き5%のインフレが続くのではないか」というごく真っ当な疑問を持っている。 そしてその疑問が解消されないままであったため、「次の利上げは0.5%? 0.75% それとも1.0%??」という疑念が大きくなり株式市場も債券市場も大きく売られた。早ければ6月14日からのFOMC会合で次の利上げが決定される。そして大方の見方としては「利上げは確実に行われるが、それがどれくらいの幅なのか」によって市場が揺れている形となる。 私どもの見立てでは、今回の連銀の0.5%の金利上昇によって市場が動揺したことを考えると(市場が動揺した結果、事業体が前向きな気持ちになれず雇用や設備投資が産まれない可能性を考えると)、0.75%以上の大きな利上げとはならないのではないかと考えている。6月の会合でどれくらいの幅で金利を上昇させるのかが目下投資家の悩ましい点ではあるが、その向こうに「連銀は最終的に金利をどこまで上昇させるのか」が次のポイントとなろう。 昨年末のドットプロット ![]() これまでの投資家の見立ての主要なものは「2025年までに3%いかない程度」の利上げを予想するものばかりであった。事実、昨年末のプロットによるとそれくらいの予想をしていたものばかりだった。 ドットプロットのプロットは、ストーリーの骨組み(プロット)である。このプロットにかけて「プロットを失った連銀」というタイトルの記事が様々なメディアで散見されるようになるほど、今の連銀が果たして最終的に3%の利上げで留まるのかという点は疑問だ。 最終的に5%程度にまで利上げをしないと、今のようなインフレは抑えられないだろう。それに、ロシア・ウクライナの混乱がさらに市場の不透明感を押し上げることを考えると株式市場・債券市場はどちらにしろ売りが先行していく展開が続くだろう。 「3%を超えて連銀は利上げをするぞ」というメッセージが市場に伝われば、投資家は「連銀はプロットを失った」と恐怖に駆られてますます売りが先行する展開となる。現在は連銀とのコミュニケーションが失われいてる状態なので、連銀が今後どのようなメッセージを出していくか、あるいは出さないでいるかがポイントとなっていくだろう。 |
ポートフォリオ
物価上昇が続けば、いわゆるスタグフレーションとなるのではないかと懸念する声もある。アメリカは70年代、2年で50%の株価下落を経験するスタグフレーションとなったが現時点ではその心配はしていない。企業の成長は依然として力強く、インフレによる価格調整を吸収できる体力は残っている。短期的には面白くない展開が続く。 |