前回の記事で、HSBC法人口座開設時に抑えておくべき基本事項を解説致しましたが、読者の方より、「法人口座開設時にも、個人口座と同じように英語力は必要でしょうか?」という質問を頂く事があります。今回はこの疑問にお答えします。
法人口座開設に英語力は必須ではない
結論から申し上げますと、個人口座に比べれば、英語力はあまり重要視されていません。その理由は、法人口座開設時の面談には、会社に登記されている取締役、及び10%以上の株式を持つ株主全員の出席が求められている事と関係しています。つまり、法人口座開設は一人の問題ではないという事です。香港に法人を作った以上は、香港でビジネスを行う予定があるという事ですから、多くの場合、関係者は一人ではないはずです。
法人の取締役、つまり社長が仮に英語が喋れなくとも、その他の人間が堪能で、香港でビジネスを行っていくのに支障が無いと判断されれば、口座開設の第1関門はクリアしたことになります。逆に言えば、本人の英語力というのは法人口座開設にとってみれば第1関門でしかないという事です。それよりも重要なのは、どんなビジネスを行うかという事、そして銀行側の立場にたってみると、月に何回くらいの入出金があるか、資金をたくさん預けてくれるか、定期預金をしてくれるか、法人クレジットカードを利用してくれるかなどの方が重要なわけです。
そういう意味で、法人口座開設時には本人(取締役)の英語力は必須ではないと言えます。
取締役1人かつ英語が喋れない場合は要注意
取締役と株主が同一人物で、全て1人で会社を設立するパターンはよくあります。この場合、その人が英語もしくは中国語を喋れないと、銀行からは極めて不信感を抱かれることは容易に分かるかと思います。この人は言葉も喋れないのに香港に来て何をしようというのだろう、と当然思いますね。仮に、日本語を全く喋れないインド人がたった一人で三菱東京UFJ銀行に来て、法人口座を作りたいと言って来たらどうでしょうか?非常に滑稽な話だと思います。
取締役が1人でかつ英語が喋れない場合、日本の会社での実績、そして香港、少なくともアジアにおける取引実績、そして今後の事業計画が非常に重要になります。本人が言葉が出来なくともどうやって会社を運営していくのか、これからすぐに日本語のできる香港人を雇ってサポートしてもらうのかなど、具体的な話が必要になります。もちろんただ言うだけではダメです。少なくとも向こう1年くらいは、スタッフの人件費含めて会社を運営できるだけの資金を最初に入れないと説得力がありませんし、スタッフに求める要件などもビジネスに合わせて定義しておく必要があるでしょう。
具体的に英語が必要になるシーンは?
では、口座開設を行う場合において、最低限英語が必要になるシーンはというと、まずは口座開設時の面談です。事業計画の説明は誰かに任せるとしても、簡単な挨拶くらいは出来るようにしておかなければなりません。いつ香港に来たか、日本ではどこに住んでいるか、などごく普通の日常会話が二言三言話せればOKです。他の部分は代理店等に任せることが出来ます。
しかし問題なのは口座開設後の口座利用時です。インターネットバンキングは当然英語ですし、何かトラブルがあった時は本人(サイナー)が英語で電話問い合わせをしなければなりません。長期間ログインをしていなかったり、入出金が半年以上無かったりすると、個人口座同様、凍結の可能性が出てきますので、そうならないように口座はしっかり活用しましょう。(ビジネスさえ動いていればこんな心配は無用なのですが。。。)また、有料ですが、HSBC法人口座に限って、インターネットバンキングを日本語化する事が出来ます。英語になれるという意味ではあまりお勧めしませんが、どうしても必要な方は検討してみてください。