今年最初のマーケット概観。 金融マーケットはコロナ下で悲惨な状況が伝えられる一方、各国の景気刺激策がなんとか景気の底割れを起こさずに済んでいること、また株式指数の構成銘柄にもなるような大企業の利益が改善していることなどにより好調だ。この株価は足元景気の好調さからくるものではなく、リストラなどのコストカットによるところが大きい。 一昔、トマ・ピケティの「21世紀の資本」という本のなかでr > gの不等式が存在することで格差を助長すると書いたが、まさにこの格差の助長をみるにつけ普通の人でも金融市場に片足を突っ込んでおかなければいけない時代だなと痛感する。 そして金融マーケットに片足を突っ込むためには金融市場との媒介となる証券ブローカーやIFAとの関わりは欠かせない。 今回のメルマガではマーケットはマーケットでも、金融マーケットではない、IFAマーケットに目を向けたいと思う。なぜなら、弊社とのお取り引きを始める方々はIFAに何らかの不満があるのだが、その不満の原因はIFAが提供するポートフォリオのリターンよりも、IFAと連絡が取れないとか、IFAがそもそもポートフォリオの中身を理解していないとか、はたまたIFAが誰なのかも分からないことにほぼ集中するからだ。 逆にポートフォリオのリターン、中身が気に入らないという方でのお取り引きは2割に満たないかもしれない。 弊社はそもそも販売行為をしておらず、オフショア積立保険の管理のみにサービスを絞ってはいるがそれでも「現在のIFA市場の動向を教えてほしい」「良いIFAがいたら紹介してほしい」といった声をよく頂く。そこで、今日は現在のIFA市場の動向とIFAの見つけ方について書いていきたいと思う。 1. 現在のIFA市場 IFAマーケットは一貫して2015年から縮小しつつある。2000年代には、いわゆる金融ビッグバンの影響もあって外国の銀行・証券会社・保険会社へのアクセスが容易となった。香港のHSBCに銀行口座を保有することがある種のステータスとなっていた時期があり、使う予定もないのに口座開設がブームとなり、またそれを助ける業者も数多くいた。一方で、知識のない善良な日本人顧客をなかば騙すようなIFAが数多くいたのもこの頃である。 2000年中盤にはIFAは営業力を他に頼りはじめ、ライセンスのない、IFAを紹介するだけの紹介者(IFAブローカー)が暗躍する。彼らはIFAから手数料をもらい、営業の代行をするのだが日本でも香港でも金融ライセンスを持たないため行動規範に制約がかかることがない。すなわちやりたい放題である。しかも、そのブローカーAがその下にブローカーB、ブローカーCをつけるといういわばマルチ構造となりますます売り方が荒くなる。 しかし、そんなブローカーたちも2013年から2015年ごろに日本の金融当局から行政処分をうける。ライセンスのない中で金融商品を販売するのは当然違法であるし、仮にライセンスがあったとしても日本で認可されていない金融商品を、販売手数料を受け取って販売するのはやはり違法になるからだ。 そして香港の金融当局も2015年にGN15というルールを設けて、販売手数料の支払い頻度を従来の18-24ヶ月から60ヶ月とした。このメルマガを読んでくださっている方の中にも「オフショア生保は25年で契約するのがいいですよ」と言われた方は多いはずだが、あれは25年契約が顧客にとって良いのではなくIFAならびにブローカーが受け取れれる販売手数料が最大になるからなのだ。 そしてIFA・IFAブローカーは18-24ヶ月にわたって販売手数料をうけとり、残りの23年は顧客がどうなっても知ったコッチャない… という信じがたいような顧客無視がIFA業界ではまかり通っていたのである。最初の18-24ヶ月はきちんと積立金を支払ってもらわなければいけないので顧客に優しくするが、それ以降はガラリと態度が変わるのはそのためだ。 香港の金融当局はそんなやり方が横行する業界にメスを入れた。とはいえ、18-24ヶ月が60ヶ月となることで、IFAとIFAブローカーたちが合意した契約をIFAは守ることができなくなった。日本と香港の行政当局のダブルパンチによってIFA市場は急速に縮小していく。 IFAもビジネスなので、キャッシュフローに行き詰まったIFAは廃業・あるいは大幅な縮小を余儀なくされる。IFAを放り出された顧客は自分で保険証券をコントロールするしかなくなり、路頭に迷うことになる。(この経緯こそが弊社設立のきっかけである) 当時は目立ったところでは、日系IFAで5社・香港系IFAで10社ほどあったが今は日系は全滅、香港系で3,4社が残っているといったところか。IFAを新規に設立することもハードルが上がっていることもあり、新しいIFAが業界に算入したというのは聞いたことがないしこれから当分の間聞くこともないだろう。 弊社にご依頼をいただく場合、まず現在お口座を管理しているIFAファームのお名前を聞く。弊社にご相談をいただく時点で、何らかの問題をかかえてらっしゃる場合がほとんどなので、どのIFAが顧客にどういった扱いをしているのかがわかる。最近、弊社にご依頼をいただく際のIFAは2社あり、1社は日系のA社、もう1社は香港系のH社である。 日系のA社は2013年に行政処分をうけており、そこからなのか以前からなのか分からないがポートフォリオの管理がずさんで顧客がA社スタッフにポートフォリオの中身について何を聞いてもあやふやな返事しかせず「もう少し様子をみましょう」という紋切り型の回答に終始するそうだ。「もう少し様子をみましょう」が何年も続いているのでさすがに不安になり弊社にご相談されるというパターン。 そしてもう一社の香港系H社であるが、こちらはそもそもマルチビジネスと言われるようなピラミッド構造の販売体制を敷いており、ピラミッドの頂点にアドバイザーが位置しているせいか末端にいる顧客が誰がアドバイザーなのかを顧客が知ることは難しいようだ。そもそもアドバイザーからアドバイスをされて金融商品を購入しているわけではないので、アドバイザーが誰なのかを知りうる機会もないし、そもそもアドバイザーのような存在がいるとも思わないということだろう。当初はH社からの移管の方があまりにも何もご存知ないのでお話が噛み合わず苦労した記憶がある。 2. IFAを選ぶ 弊社は販売行為は一切行わない。また、かつて巷にあふれたIFAブローカーのようにIFAを紹介する業も行わない。それはレギュレーションの問題でもあるが、金融商品の販売行為は本質的に顧客との利益相反を生む、という信条の問題でもある。金融商品を販売して手数料を受け取る以上「真にその顧客にとって有益なアドバイス」なんてできっこない、と考えている。 しかし一方で、世界に目を向けると優良な金融商品があふれていることもたしかであり、いまだに「良いIFAを紹介してくれ」というご要望は多い。海外の金融商品を購入するのであればご自身で直接買い付ける、あるいはIFAに頼るしかないわけだが後者の場合に良いIFAがいるなら知ってるなら紹介してくれというわけだ。 が、申し訳ないがやはり紹介していない。 ググって問い合わせをしてみて、ご自身の要望にあったIFAを探すしかない。金融商品は逃げないので、IFAをすぐには信用せず時間をかけて彼らの仕事ぶりを観察するしかない。 ただ良いIFAを見つけるのに一つテクニックがある。たとえば商品Xを買いたいとしよう。仮に商品XがIFA経由でしか買えないと知っていても、商品Xの提供元の受付メールとか顧客用フォームにしれっと下記のような内容を英語で出すのだ。 「商品Xに興味があります。購入プロセスを教えてください」 提供元が直接買い付け可能であれば購入プロセスをそっくりそのまま教えてくれるだろうし、IFA経由で購入が必要な場合はこういうメールを返信してくる。 「商品XはIFA経由でしか提供できません。以下、日本人IFAがいるあるいは日本語話者がいるIFAをご紹介します。 IFA A IFA B IFA C こちらにご連絡ください」 と。商品提供元からIFAを紹介してもらうのだ。彼らはトラブルになることを避けるため、中途半端な紹介はしない。ある程度自信をもって勧められるところしか紹介しないので、ちょっとした身元保証がついているようなものだ。それからA,B,Cに連絡をすればよい。 では、まず最初の英文メールをどう書くか? ご自身でググってください。 |
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各国の金融当局は今後来たるべき不景気に備えてさらなる緩和・補助金を大盤振る舞いするはずである。これらが続いている限り金融市場の底は固い。また2020年からの景気回復フェーズで先進国でも5%前後の経済成長を見込めることを考えると、ただただ市場が高値圏を突破し続けているという理由でリスクオフする必然性は全くない。 こういうときは吹かせるだけ吹かせておく、というのが資産運用のセオリーだろう。 |